院長ブログ カーブ

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第422回 忙酔敬語 人類最強のポッチャリおじさん

 この16年間、年末年始は日当直のため医局で年越しをしています。紅白にはまったく興味がなく、裏番組の総合格闘技選手権を1人で楽しめるので幸せです。

 今年はあのエリヤーエンコ・ヒョードルが出場するというのでワクワクしながら観戦しました。ただし他の試合には興味がわかなかったので、チャンネルを切り換えながらタイミングを計りました。そして10時ころにヒョードルが登場しました。

 はじめてヒョードルを見たのは2007年の対チェ・ホンマン戦でした。チェ・ホンマンは218㎝、160㎏の大巨人。試合前に独特のヘンテコリンなダンスをすることで知られていました。もともとダンサー志向で目立ちたがり屋。藤子不二雄A原作『怪物くん』の実写版ドラマで、フランケンシュタインを彼しかいないというほどピッタリと演じていました。当時も日本と韓国の関係は微妙で、よくぞ出演してくれたと思ったものです。

 一方、ヒョードルは当時から向かうところ敵無しで皇帝と言われていましたが、いざリング上に登場した姿を見たとき、他の選手がビルドアップされてムキムキなのに自然体のポッチャリした体をしていたので驚きました。身長は183㎝で体重は100㎏ちょっと。ホンマンはでかくてもムキムキ。本当に試合になるのかと危ぶまれました。

 ところがいざ試合が始まると、無駄のない動きでまたたく間にホンマンの腕を関節技で決め、あっけなく勝負はつきました。ヒョードルはまったくの無表情。こんなに強い男がいるんだと心底感心しました。

 ヒョードルと同じくらいの体格で私を唸らせたのは、知る人ぞ知るクロアチアのターミネーター、ミルコ・クロコップ。彼の体はムキムキです。2003年、160㎏もあるのにムキムキの体で、元横綱の曙を彼の家族の目の前で無慈悲にノックアウトした怪物ボブ・サップを一発のパンチで彼の頬骨を叩き折ってリングに沈めました。その後、2016年、すでに40過ぎのオッサンになっていましたが、大関を引退したばかりの体重が倍近くもある把瑠都を開始49秒でみずおちへの膝蹴りでリングに沈めました。

 柔道家の野村忠広さんはオリンピックで金メダルを4回も取った天才ですが、特別な筋トレはジャマになる筋肉がつくのでしていなかったと言っています。しかし、60㎏の軽量級なので自然にムキムキになっていました。

 思えば、昔のプロレスではムキムキの選手はいませんでした。鉄人ルー・テーズは老いても自然に引き締まった体でアントニオ猪木をバックドロップで決めました。そのアントニオ猪木も無駄な脂肪はついていませんでしたがムキムキではありませんでした。

 ムキムキの元祖はブルース・リーあたりでしょう。ムキムキのためにステロイドでも使ったのか若死にしました。かたや『少林寺』でデビューしたリー・リンチェイ(後のジェット・リー)は一見自然な肉体をしていましたが、格闘のシーンがスローで映し出されたときに鍛えられた筋肉がクッキリと現れて、朝日新聞のコラムでも賞賛されたほどです。

 さて、今回の試合。ヒョードルははや43歳で、さすがにくたびれた感じでした。かたや怪力クイントン・ジャクソン。身長185㎝、体重115㎏。かってはムキムキでしたが41歳でこちらもユルイ体つきでした。ジャクソン得意のパンチ戦となりました。ヒョードルの寝技を見たかったのですが、あっさり右ストレートでジャクソンを倒しました。  格闘技も見た目よりも中身だと思ったことでした。