佐野理事長ブログ カーブ

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第408回 忙酔敬語 カンブリア爆発

 今年は適応と進化、ひいては人間の生き方について考えされられました。

 生物は食べたり食べられたり、取りついたり取りつかれたり、酸素を発生したり酸素を使って二酸化炭素を発生させたり、環境をととのえたり環境を破壊したり、とにかく一つの種で生きぬくなんてことは不可能で、お互いに密接な関係性をきずいて生きています。どの種が優れているのかとか勝ち組なのかという議論はまったくナンセンスです。

 人類も例外ではありません。いろいろな動植物をいただいて生きています。ウィルスや寄生虫などに取りつかれて死ぬことだってあります。森林は膨大な酸素を産生し、人間はその森林を伐採して酸素を消費し、さらには大量の二酸化炭素を発生させて地球の温暖化にまで影響をおよぼすようになりました。

 森林を伐採するのは今に始まったことではなく、古代中国や古代ギリシャなど高度な文明が生まれたところでは青銅器や鉄などの製造のために森林を伐採したため、当時から乾燥地帯となりました。もともと中国の中原やギリシャの近辺は青々としていたそうです。

 生物は環境に適していなければ滅びます。人間も職場や家族、そして学校などの生活環境が本人と適合していなければ心身ともにやられます。適切な食事を摂ることはもちろん大事ですが、人間は雑食性なので体質などによって食事の内容を変化させられます。

 練馬総合病院の漢方の達人、中田英之先生は、どうして漢方が効いたか、というよりも、どうして漢方が必要になったのか、ということが根本治療と考え、最近は生活指導だけで漢方はほとんど使わなくなったと言っていました。

 確かにごもっともで、私も心身症などの患者さんに対して初診時にどんな生活環境にいるかを確認しています。しかし、そう簡単に生活環境を根本からくつがえすのは不可能な場合がほとんどで、苦笑いをして「ちょっとお薬を使ってお手伝いしましょう」と言うのが現状です。しかし、ブラック企業で働いている患者さんには、「環境に適応できない生物は絶滅します」と最終通告みたいなアドバイスまでしています。

 生命の誕生から多細胞生物まで進化するのに30億年もかかりましたが、それから5億年後、すなわち今から5億年前、「カンブリア爆発」といわれる時期に現在の生物の祖先が出そろいました。爆発と言っても「ビッグバーン」みたいな瞬間的なスパンスではなく数千万年のレベルです。動物では環形動物(ミミズなど)、脊索動物(ホヤなど)、節足動物(昆虫やオキアミなど)、軟体動物(貝やタコなど)などがいっせいに登場しました。

 その後、生物は多岐に進化しましたが、5回の大絶滅をくり返してきました。生物は本来なかなかシブトイもので、絶滅してもたった(?)5~7000万年くらいで復活します。

 以前、何かの番組で脊索動物のホヤは魚類や哺乳類などの脊椎動物につながるので実は高等動物だと解説していましたが、バカな話で、これらの生物は同列です。今、地球上では人類が偉そうにしていますが、土壌細菌が生物の総重量の半数以上を占め、昆虫も陸上動物の中ではダントツ1位です。海ではオキアミが1位で魚などの重要な食料源です。

 その昆虫が近年急に減少して、100年後にはほとんどいなくなるのではないかと言われています。そうなると昆虫による受粉に頼って繁栄している被子植物も危機にさらさわれることになります。でも絶滅してもまた復活するのが生物のならいです。滅びるのなら滅びてしまえ、と私は腹をくくっています。地球そのものの寿命はあと10億年だそうです。