院長ブログ カーブ

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第407回 忙酔敬語 好きな食べ物の変遷

 最近、子供のころは苦手だったサツマイモやカボチャが好きになりました。 

 当院の入院食は、朝食がパンの場合は副菜としてよくグラタンを提供します。女性向きにサツマイモやカボチャのグラタンが多くなりますが、以前はこれがイヤでした。グラタンをほじくってサツマイモやカボチャを残し、検食簿にはいつも「ジャガイモにして欲しい」とワガママを書いていましたが、当院の栄養士は気骨があり、院長である私の意見に対してずっとシカトをつらぬいてきました。

 しかし、最近になってコンガリ焼けたサツマイモのグラタンの美味しさに気づきました。切迫早産のため長期入院をしている十代のヤンママがいました。好き嫌いが多く、和食の朝ご飯にはほとんど手をつけませんでした。しかしサツマイモのグラタンは別格で、喜んで食べてくれました。

 幼少時を思い出すと、香ばしく焼けた焼き芋はキライではありませんでしたが、母が蒸かしたサツマイモには気が滅入ったものでした。当時のカボチャも水っぽくて、これもダメでした。美味しそうにパクパク食べているオジサンの気が知れませんでした。

 昨今、昔の農作物の味を懐かしむ声が聞こえますが、サツマイモとカボチャに関しては例外で格段に味わい深くなりました。サツマイモのグラタンに味をしめてカボチャに手を出しても意外にいける。カボチャはホクホクして煮物でもハズレがなくなりました。

 我が家では年末にスウィートポテトの焼き菓子を作ってお世話になった人に配るのを行事としています。材料は種子島産「安納紅蜜芋」。これを蒸かしてマッシュにして生クリームと砂糖を入れて小分けにしてバターを塗ってオーブンで焼き上げます。マッシュにするのは私の役目。芋自体が美味いので、こんなに手を加えるのならもっと安価な芋でもよかろうと思うのですが、逆らわずに黙々とマッシュ作りに専念します。芋の皮は不要なのでそのまま私の胃袋に収納。食物繊維も豊富で棄てるはもったいない。しかも皮の方が味が濃厚です。「スウィートポテトより美味いぞ!」と心の中でつぶやきます。 

 反対に昔懐かしいのはトウキビと夏ミカンです。昔のトウキビはモッチリとして変に甘くなく、これぞ穀物!といった感じでご飯代わりに4本ばかり食べたものです。それがいつの間にか水っぽくて甘ったるいトウモロコシ(トウキビとは言えません!)に取って代わられました。人の口に迎合するのにも程があります。柔らかくて生でも食べられるだって? 果物か、お前は! 年がいもなく頭に血がのぼりました。

 あの大きくて酸っぱい夏ミカンはどこに行ったのでしょう? 私があまりにも騒ぐので家内が「生活クラブ」で取り寄せてくれましたが小ぶりで甘みがある。本当の夏ミカンは甘みはなく、食通の池上正太郎さんが大戦中にレモンのように獲れたてのサバを締たら仲間の兵隊さん達が「美味い美味い」と喜んで食べたそうです。「生活クラブ」の夏ミカンではそんな芸当はできそうもありません。本当は甘夏ミカンだと思います。甘夏ミカンは夏ミカンから糖分はそのままで酸味だけを除いただけだそうです。ついでに小粒になり水分も飛んで水々しさも失われました。初めて登場したときは「これは美味い!」と瞠目したものですが、今となってはあの大きな房と水々しさが懐かしく思います。

 今回はサツマイモとカボチャ、それにトウキビと夏ミカンで終わってしまいましたが、もちろんまだ序の口です。要望があれば別の機会に書きたいと思います。