佐野理事長ブログ カーブ

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第404回 忙酔敬語 秋もあけぼの

 四季のなかで秋が一番キライでした。夏はキッパリと暑く、冬はキッパリと寒い。春は生命がだんだんよみがえるヨロコビを感じさせてくれます。それにひきかえ秋はだんだんうら寂れていきテンションも落ちていきます。世間では紅葉だ、めぐみだ、と騒いでいますが、それは本州の夏が殺人的に暑いためです。今年の札幌はひどかった。熱帯夜まで経験させられました。子供のとき、夜は窓を閉めて寝ないと風邪をひくと教えられてきましたが、今年は高齢者は熱中症の危険があるので窓を開けて寝るようにとNHKの天気予報で注意されたほどでした。

 我が家はマンションの14階にあります。したがって風通しが良く、クーラーは必要ありません。たまに暑いときは「来年こそ買おうか?」と相談することもありますが、せいぜい2,3日のことなので、とうとう購入せずに猛暑をむかえました。私の寝室はJR学園都市線に面しているので、窓をあけると列車の轟音がモロに入り込んできます。でも真夜中はさすがに走らないので、高齢者の私は熱中症で死ぬ危険があるため、とうとう一日だけ窓を開けて寝ました。でも、何を監視しているのかヘリコプターの行ったり来たりする音がしつこく聞こえました。そこで、あえて音に集中するマインドフルネスという技を使って何とか眠ることができました。でも翌朝はクッタリでした。

 というワケで9月中旬からの涼しさはシミジミと嬉しく感じました。しぶとく咲いているコスモスやヒマワリにも慈愛の目で見ることができました。ナナカマドも真っ赤。秋も悪くないなとさらにシミジミと思いました。夜空を見るといつの間にか青白いシリウスもかがやいていました。

 私の体は朝方使用なので、5時前には起床して5時20分ころに家を出ます。以前はその時間帯に歩く人はほとんどなく、自分1人だけの時を過ごすことができました。それが近頃では早朝ウォーキングに目覚めた人が増えて、なかには左右に女性(高齢ですけど)をはべらせて得意満面に歩いている輩も現れました。その輩につきしたがっている女性たちも何だかはなやいだ様子。雨の日はどうなっているのかと思ったら、JR新琴似駅の待合室で女性たち相手に談笑している輩を発見しました。男性ホルモンも女性ホルモンも枯れはてているはずなのに、さすがだなあ、と感心しました。そういえば学生時代に泌尿器科の講義を受けた性医学の大家である熊本悦明名誉教授は、NHKのテレビ番組で「性の根本は脳にある」と語っていました。この名誉教授はひげモジャモジャで男性ホルモンがプンプン臭っているような人でしたが、80歳をとっくに過ぎた今でも若い女性の前に出るとご機嫌で、自説の「性は大脳にあり」を実証されています。

 何となく人の悪口を言っているような、レベルの低そうな雰囲気になってしまいましたが、行きかう人たちのうち、2、3人とは「おはようございます」と気分良く挨拶をかわしています。

 早朝の魅力は何と言っても日の出まえの朝焼けにあります。夏のころはすでに日は昇り、明るいなかのウォーキングですが、秋が深まると家を出るときはまだ暗く、病院に着く頃に明るくなります。ようするに「あけぼの」のなかを歩くことになります。  清少納言は「春はあけぼの」と書きましたが「秋もあけぼの」です。せっかくの「あけぼの」を見るチャンスをみすみす逃すというのはもったいないことです。