院長ブログ カーブ

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第380回 忙酔敬語 男もつらいよ

 月経関連の悩みで苦しんでいる女性を診療していてふと思ったこと。

 「そう言えば男もつらいよなぁ」

 生物としての根源は個体の生存と生殖にあります。そういった意味で男性の根源の一つは精巣とそれから分泌されるホルモンです。女性が基本的に月に1回排卵して妊娠しなければ月経となるのに対して、男性は四六時中発情状態です。野生動物なら、そのまま突撃ですが、人間の場合は同意が無ければ犯罪となります。元気なヤツほど性欲が強いので苦しみは限りないものとなります。性欲が制御不可能な状態になり、朝日新聞の悩み相談に投稿した男子中学生に対して、フェミニズムのレジェンド上野千鶴子先生はそれはやさしく答えました。(くわしくは『身の下相談にお答えします』(朝日文庫)をご覧ください)

 「中学生で朝日新聞を読んでいるんだ、偉いわねぇ。いっそのこと経験豊富な女性に、やらせて、とお願いしてみたら。10人に1人くらいOKしてもらえますよ。わたしの知り合いの男性がこの方法で何とか乗り切ったそうです。わたしがもっと若ければ・・・」

 私の愛読書の『今昔物語』にも以下のお話しがあります。

〈昔、ある男が都から地方へ旅をしていた。その途中、急に性欲を覚えて気も狂わんばかりになったが、その辺は青菜の畑で白いまるまるとしたカブが土の上に顔を出しているだけであった。そこで大きいのを引っこ抜いて小刀で穴を穿ち、それでマスターベーションをして、あぁ、さっぱりした、とばかり旅を続けて行った。間もなくその畑の主達が収穫をしに家から出てきた。その娘が転がっているカブを見つけ、「この穴のあいたカブは何なのだろう」としばらくもて遊んでいたが、お腹がすいてきたので少ししなびたカブを食べてしまった。その後何となく気分が悪くなり何ヵ月もするとだんだんお腹が大きくなり妊娠していることが分かった。父と母は「いったい相手は誰なんだ」と問いただしても、娘は「以前、畑に転がっていたカブを食べてから具合が悪くなった」と言うばかりであった。そうこうするうちにとうとう元気な男の赤ちゃんが生まれてしまった。5、6年後、例の男が地方から都に帰ってきた。その時は何人かの仲間と一緒で、「そう言えば、以前ここを通りかかったとき無性に女を抱きたくなったが誰もいないのでカブに穴をあけてマスをかいてしまったんだ」と大声で言った。それを聞いた父親が「ちょっとお待ちください!」と泣き叫んで男の袖をつかみ、かくかくしかじかと今までのいきさつを語った。男はさすがに驚いたが、男の子は自分とそっくりな顔で、娘はなかなか可愛い。「どうせ都に帰っても頼りになる父母や親類もいるわけではないし、ここで人生を送るのも縁であろう」と思い定め、以後、この土地に暮らしたことである。〉

 現代医学的に考えれば精液の入ったカブを食べたくらいで妊娠するはずはありませんが、とにかく良くできた話です。昔、性教育をさかんにやっていたときは、この話を持ち出して、男の愛と性欲は別物、よくよく考えてカブみたいになってはいけないよ、と教え聞かせましたが理解してくれたかどうかは定かでありません。

 私? おかげさまで男性ホルモンはとうに分泌されなくなり、悶々生活から解放されてサッパリした境地です。大豆食のせいもありお肌はつやつやで女性に間違われることもあります。しかし、ものの考え方は男性的です(良い悪いは別ですが・・・)。いずれにせよ人畜無害であることは確かです。