院長ブログ カーブ

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第373回 忙酔敬語 人はひとりでは生きられない

 2月17日(日)札幌市医師会医学会の特別講演で日本バイオセラピー研究所の成田聡子先生の『宿主の心と身体を操る生物たち』というお話しをうかがいました。

 以下、抄録の抜粋です。

〈‥‥‥。本公演では、それらの共生関係の中でも、小さく弱そうに見える寄生者たちが自分の何倍~何千倍も大きな体をもつ宿主の脳も体も乗っ取り、自己の都合のよいように巧に操っている例をご紹介します。

 (毒針を打たれて)まるで犬の散歩のようにハチの意のままについて行くゴキブリ、生きながら自分の体内を食われ続けるイモムシ、さらに食われたあとにも自分の体を食べた憎き寄生者の子どもたちを守ろうとするテントウ虫、泳げるわけもないのに体内の寄生者に操られて入水自殺するカマキリ、本来オスであったにも関わらずメスに変えられ寄生者の卵を一心不乱に抱くカニ、そして私たち人間でさえ体内に存在する小さな別の生き物に操られているかもしれない研究例などを盛り込みました。‥‥‥〉

 人間を操るかもしれない生物ってなんだろう? これが知りたくて参加しました。答えはトキソプラズマでした。トキソプラズマは妊婦さんが初めて感染するとお腹の赤ちゃんにも感染して障害を持って生まれることで知られていますが、それ以外では問題がないとされてきました。ところがチェコの研究者の統計によると、トキソプラズマに感染している女性は外向的でセクシー、反対に男性はIQが低くて粗暴、という報告があるとのこと。フランス人は食いしん坊で、いくらタルタルステーキは生肉だから危険だと言っても国民的な料理として定着しています。フランス人の女性がセクシーなのはタルタルステーキによるものなのかもしれませんね。トキソプラズマを持つ男性がバカで粗暴というのは、そうした無知な男が危険なタルタルステーキに手を出すから、とも考えられます。

 おどろおどろしい生物たちの生態を知ってたどり着いた私の結論は、生物の進化は、その種だけではなく、その種を取り巻く生物たちとセットになってなされているんだな、ということでした。取りつく種ははじめから特定の宿主をねらって取りついたのではなく、取捨選択の結果、たまたまそういう行動になっただけらしいからです。

 人間もおのおの1人で生きているように見えても腸内細菌などの小さな生物や、食べ物になる生物のおかげで生きています。ひとりでは生きられません。

 人を取り囲む生態もセットになっているので、お馴染みでない生物に接触するのは危険です。イヌやネコ、馬や牛、羊など、数万年の歴史を持つ生物ならひとまず安心ですが、アライグマ、ハクビシンなどが可愛らしいからといってペットにするのは考え物です。人間に住みよい生態系を荒らしかねません。アライグマやアメリカザリガニが在来種の生物に影響をあたえていると騒がれていますが、これも自然淘汰の結果で、人間が自分の都合で飼育して逃がしてしまったあげく、そして騒いでいるとは勝手なものです。

 最近、屯田や茨戸にキツネが出没するようになりました。私が遭遇したキツネは私を見たとたん、そそくさと逃げて行きましたが、年配の女性は2匹のキツネに取り囲まれて怖かったと言ってました。誰か餌を与えているのだろうと思ったら、案の定、ドッグフードをばらまいているオジサンがいるとのことでした。キツネはおそろしいエヒノコックスの宿主です。人間との棲み分けをしなければ、お互いに不幸な結果になりそうです。