竹内正人・細川恭子・横手直美著(中央法規出版株式会社)、税込み1680円。8月の朝日新聞第一面の書籍広告欄に掲載されていて、いつか買おうと思い、広告を切り取って財布に入れていましたが、いろいろ忙しく、実際に買ったのは先月でした。副題は「産前・産後のすべてがわかる安心ガイド」。竹内先生は産科の開業医、細田さんは3回の帝王切開を経験した産科ジャーナリスト(?)、横手さんは2回の緊急帝王切開を受けた助産師で保健看護学の教員。何だか説得力のありそうなメンバーですね。
内容は当院で行っている方法とほとんど同じでした。また、違う方法で行っている施設に対しての配慮もしておられました。たとえば夫立ち会いの帝王切開は、個人病院では行いやすいが、中央手術室があるような総合病院では産婦人科だけでは決められないので難しいことがあるなど。
帝王切開についてのメリットについての言及も、私が常々妊婦さんに説明しているのとほとんど同じなので可笑しくなりました。以下、私の説明。
1.予定がたつ。
2.子宮脱や痔が少なくなる。
3.生命保険(入っていれば)が使える。
4.陣痛を体験しないですむ。
この本を読んでハッと気づいたのは、自分が母親教室でお産について話すことは経腟分娩についてで、帝王切開にはほとんど触れていないことでした。帝王切開でも夫立ち会いはできると言ったことはありましたが、それ以上のことは話していませんでした。確かに5人に1人の妊婦さんが帝王切開を受けるご時世なのに片手落ちでした。ただし、お母さんたちをこわがらせないために、上記の4項目に触れながら説明したいと思いました(「4.陣痛を体験しないですむ」は陣痛に対する恐怖をあおりそうなので適当にしとかないといけませんけどね)。
母親教室で、「ハーイ、お産がコワイと思っている人、手を挙げてください」と言って手を挙げてみせると、ほとんどのお母さんがおずおずと手を挙げます。
しかし、実際に帝王切開を受けたお母さんは、経腟分娩にこだわります。「帝王切開を受けたからといって、けっして負け組ではありませんよ」と説明しても、自信がなさそうに微笑むばかりです。そこでブラジルや中国の帝王切開率の高さを示して、「ブラジルや中国では帝王切開を受けるのはステータスシンボルみたいなもんですよ」とたたみかけます。ブラジルのデーターは昔ブラジルから札幌医大に留学してきた助産師さんの話から聞いたもので、中国のデーターも人からのまた聞きです。最近、これらのデーターに自信が持てなくなりましたが、この本にはちゃんとブラジルの帝王切開率は40%以上、中国は46.2%と書いてありました。でも、これも(私にとって)また聞きか・・・・。
Q&Aのコーナーもタップリあります。各施設でも十分に説明しているようなことがほとんどですが、心から納得していないんでしょうね。参考になりました。
値段も手頃だし、内容も分かりやすいので、帝王切開でお悩みのお母さんには是非おすすめの本です。どうしても買うのはイヤだというお母さんには貸し出してもいいですよ。ただし当院には一冊しかないので必ず返してくださいね。
第90回 忙酔敬語 『ママのための帝王切開の本』