佐野理事長ブログ カーブ

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第73回 忙酔敬語 生理痛(その5)

9.骨盤内うっ血症候群

とくにこれといった原因がないのに(注:本当はあるのです)、ふだんからお腹が重苦しく、月経もつらいという人がいます。婦人科で内診されても子宮や卵巣に痛みはないので、「何でもないですよ」と言われることもあります。そんな方でも注意して診察すると、骨盤の内側に痛い場所を見つけることができます。このような状態を骨盤内うっ血症候群といいます。いわゆる血のめぐりが悪いのが原因です。肩が凝る、頭が重い、足先が冷えるといった症状をともなうことがあります。実際にこの状態の人の血液を調べると、血液の粘り気が強く、細い末梢の血管をサラサラと流れにくいという研究報告があります。月経で子宮が収縮するときも、子宮の筋肉の中の血液がスムーズに流れないため、痛みが増します。
このような女性には漢方薬が効きます。桂枝茯苓丸が一番よく使われ、症状が強く、便秘がちな人には桃核承気湯、通導散が向いています。痛みはそれ程でもないが、むくみがあって冷え性の人には当帰芍薬散が効きます。これらの漢方薬は子宮内膜症や子宮筋腫の症状を改善することもあります。これらの病気は血のめぐりも悪くなっているからです。

10.その他の治療法

①鎮痛薬
一番基本的な治療法です。1回の月経で2,3回の服用ですむのならこれで十分でしょう。いろいろな種類が出回っていますが、人によって向き不向きがあります。一番の副作用は胃腸障害です。胃腸の弱い人や吐き気があって飲めない人は座薬を使ってみると良いでしょう。
②漢方薬
骨盤内うっ血症候群に使用する漢方以外でも月経痛に効く漢方薬はいろいろあります。鎮痛薬は基本的に体を冷やしますが漢方は冷やしません。鎮痛薬ほど確実性はありませんがためしてみる価値はあります。芍薬甘草湯は筋肉のけいれんによる痛みの特効薬です。
ふだんから飲む薬ではありません。当帰健中湯はふだんから胃腸が弱く下腹が痛む人に向きます。当帰四逆加呉茱萸生姜湯は手足が冷える人に向きます。安中散は冷え性で胃が痛む人のための処方ですが、痛みを取り体を温める生薬で構成されているので、月経痛にも応用できます。
③指圧
内くるぶしの4横指上の骨のすぐ後ろに、押すと痛い場所があります。三陰交といって月経痛の特効穴です。ここを呼吸に合わせてゆっくりと、心地良いと感じる強さで10回から20回指圧すると痛みが軽くなります。試してみてください。
(次回に続く。次回は神経を遮断する治療法を紹介します。最近では低用量ピルの出現で、ほとんどやっていませんが、他の治療法が効かない場合には参考になると思います)