佐野理事長ブログ カーブ

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第61回 忙酔敬語 エコチル

当院はエコチル調査の協力施設です。エコチルとは「エコロジーチルドレン」の略語で、「環境と子ども」という意味です。近年さまざまな病気が増加傾向にあります。アトピー、喘息、肥満、発達障害などです。ここ50年で化学物質が増加傾向にありますが、この化学物質が私たちや子どもの健康にどのように影響を及ぼしているのか、まだはっきりわかっていません。子どもは成長段階にあり、大人より影響を受けやすいため、環境省の国家プロジェクトとして「子どもの健康と環境に関する全国調査」を2011年から開始しました。全国10万人の妊婦さんに協力していただいて、赤ちゃんがお腹にいるときから、誕生して13歳になるまで追跡調査をするのです。いちおう現在のメドは2032年までです。札幌地区では北区と豊平区にお住まいの妊婦さんを対象に3年間で6千人の登録を目指しています。
調査の対象項目は、環境中の物質(水や空気、食べ物などに含まれる化学物質、ハウスダスト、ダニなどのアレルギー物質)、生活習慣(食事、運動、住まいなど)、遺伝的な要因。これらの要因が、子どもの成長や病気に影響を与えているかどうかを調べます。具体的には妊娠中から産後1ヵ月健診までの間に、お母さん、赤ちゃん、お父さんから血液、尿、毛髪、母乳などをいただいて化学物質を測定します。血液では、重金属、IgE、PCB、ダイオキシン類、甲状腺ホルモン(赤ちゃんのみ)。尿では、ニコチン代謝物、農薬由来化学物質。頭髪では水銀を測定します。また、食事や運動などの生活習慣を質問票で調査します。その他、血液からDNAをとって、遺伝的特性を調べたり、母子手帳や健康記録などを調べたり、一部の方ではご自宅の環境調査もします。
エコチル調査のスケジュールです。お母さんは妊娠初期と中期に採血、採尿、質問票、出産・入院時に臍帯血採取、採血、毛髪採取、1ヵ月健診で母乳採取、質問票を行います。お父さんは採血と質問票1回ずつです。赤ちゃんはろ紙採血と毛髪採取を行い、その後、13歳になるまで半年に一回、質問票を郵送でやりとりします。
協力いただいた方々に対しては、内容に応じて、謝金を金券でお支払いします(採血・採尿・質問票を1セットで3千円分)。育児や医療の相談などができるエコチル専用コールセンターのご利用ができます。一部の検査結果についてのお知らせもあります。
以上、日本の行政としてはなかなか骨太の調査です。とくに2011年3月11日の大震災にかぶっているので興味のあるところです。現在のところ日本人の平均寿命は世界のトップクラスですが、最近は何となくかげりが見えてきています。未来の子どもたちの健康や環境作りに役立つ研究だと思います。対象地区にお住まいのお母さんたち、是非このプロジェクトに参加してください。