私は冬でも3.5Kmの道のりを歩いて通勤しています。最近購入したスマホは勝手に万歩計となり、片道でも「昨日の歩数は5130歩で目標達成です」と表示します。しっかり固まった雪道を歩くのは爽快です。靴は秀岳荘のおじさんにすすめられて購入した防寒靴です。スパイクが着いているので滑る心配はありません。さすがにスニーカーよりもはるかに重いため少し疲れますが、雪道は軽いクッションになっているため膝に優しく心地が良いのです。吹雪で道が渋滞のときも車よりも確実に前に進むことができます。年に1度あるかないかですが、猛吹雪で一寸先もほとんど見えなくなることがあります。そんなときは昔使用したスキー用のゴーグルを装着します。小児科の笹島先生は笑いながら「変なおじさんに見られるんじゃないですか」と突っ込みを入れますが、猛吹雪では相手も見えないはずですから心配ありません。
歩いていて決まって頭に浮かんでくるのが、高倉健さん主演の映画『八甲田山』に出てくる軍歌「雪の進軍」です。「雪の進軍、氷を踏んで、どれが河やら道さえ知れず‥‥‥」、あとは忘れました。1977年の映画ですが、あれは見ていて寒かったですね。日露戦争にそなえて冬の八甲田山で陸軍の演習が行われました。三國連太郎さん演ずるオロカな少佐が村の長老の忠告を無視したばかりに大部隊に大きな犠牲者を出すはめとなりました。それに対して健さん演ずるカシコイ大尉は、秋吉久美子さん演ずる村の若嫁を案内人として、小部隊を指揮して無事に目的地にたどり着くことができました。とにかく寒い映画でしたが、一番感動したのは、健さんの大尉が秋吉久美子さんと別れるとき、「頭ぁ、右っ。案内人殿に例っ」と全員で敬礼したシーンでした。リーダーはこのように謙虚で情報を大事にしなければいけないなとつくづく思いました。1977年には『幸福の黄色いハンカチ』も公開され、この頃から健さんは任侠路線から名作路線へと、邦画を代表する名優となりました。
しかし、今あらためて考えてみると、情報を大切にするというのは兵法の鉄則で、医療にもかかわる大事なことです。いくらオロカな少佐でもあれはなかったのではないかと思います。兵法と医療の類似点については、私の愛読書『孫子』を紹介しながら次回のブログでお話しします。
第51回 忙酔敬語 雪の進軍