最近、高齢化にともない不妊症の患者さんが増えています。当院は不妊症に関しては体外受精まで行ってはいませんが、30年前のレベルの治療はしています。この範囲ならこう言って何ですが、けっこう良い所までいっていると自負しています。不妊症に悩む患者さんにの中にはカウンセリングも必要なケースもあり、これは当院の得意分野です。そう言えば、昔、大学から地方の病院へ出張に行ったとき、同期で不妊症を専門にしていた医師に「大学よりも妊娠成功率が高いぞ」と感心されたことがありました。
札幌でも不妊症専門クリニックや病院が増加していますが、予約も大変だし、とりあえずは近くのクリニックに行ってみるか、と当院を受診する女性はけっこういます。
不妊の相談でいらした患者さんに対しての私の第一声。
「ご主人とは週に何回仲良くしていますか?」
「えっ、週にですか? 月に2,3回ですけど‥‥‥」
「それじゃあダメですねえ、ご主人はお疲れですか?」
「夜も遅いし、私も仕事をしているので二人とも疲れています。ですからタイミングをねらっているんですけどねえ‥‥‥」
医学雑誌『産科と婦人科』で昨年、不妊症の特集がありました。その中で旭川医大産婦人科教授の千石一雄先生が次のようなことを書かれていました。
妊娠するためには、性交回数は週に1回よりも2日に1回、さらには毎日の方がもっと良い。要するにセックスレスでは妊娠は難しいとのこと。当たり前ですね。
札幌市内で不妊症専門の老舗「神谷レディスクリニック」の森若副院長も、あるセミナーで、一頃毎日のセックスは精子が薄まるから2,3日溜めてからすべきだと言われてきたが、実はあれはウソで毎日でもよい、逆に10日間以上射精しないと精子の活動が衰える、自慰でもいいから週1回は射精すべきである、と述べておられました。
高校、大学の先輩である神谷院長と同門会の宴会で隣り合わせになったとき、「先生のクリニックから、時々、タイミング方で妊娠しました、と紹介状が来るんですけど本当にタイミング方っていいんですか? 僕は週に2,3回、何も考えずに仲良くしろと指導しているんですけど」と質問したら、「お前の言うとおりだ」と笑っていました。
かように不妊症の原因は女性因子ばかりではありません。疲れたパートナーにはどうすれば良いか?
以前、産婦人科漢方研究会で、東大の先生が、男性に補中益気湯を投与したところ精子の数が増加したと発表されていました。そこで私は、セックスの回数はどうなりましたか?と質問したところ、「次回、報告します」と言ったきりそのままになっています。
吾が若かりし頃、不能に悩む男性の話題を聞くたびに「意味が分かんない」と不思議に思っていました。精力さかんな若者はいつでも出陣OKです。ついでに言えば相手は誰でもOK、危険きわまりない存在で性教育が必要となります。
女性についても排卵期は、女性ホルモンの代表格であるエストロゲンがピークに達し、発情状態になるはずです。しかし、近頃の女性は本能が表面化することなく、漫然と男性の受け入れを待っているのが現状です。現在、日本の人口は減少しています。このままだと日本人は絶滅危惧種になるのではと危ぶんでいる今日この頃です。
第326回 忙酔敬語 不妊症とセックスレス