スクワットは手軽な運動ですが、昔からプロレスでは基本的な鍛錬法として取り入られていました。女子プロの入門試験にはスクワット500回が必須だそうです。
スクワットはもともとヒンズー・スクワットと言われていました。ヒンズー教徒の祈りの中に、しゃがんだり立ったりする動作をくり返すパターンがあるからです。祈りの一端ですから、ただのスクワットではなく、手も独特の動作をします。以前、書店の健康コーナーで、ターバンを被ったインド人のオッサンが本場のヒンズー・スクワットをしている本を立ち読みしましたが、参考になりそうもないので買いませんでした。
ジャイアント馬場は力道山の厳しい指導のもと、3000回のフル・スクワットを強いられましたが、常人だと膝を痛めるだけです。その点、インテリーのジャンボ鶴田は肝炎で引退した後、大学でスポーツの指導者として活躍しましたが、一般人に対してはクォーター・スクワットを50回程度するにとどめ、それから別のトレーイングをさせていました。
私がスクワットの存在を知ったのは夢枕獏さんの小説を読んでからです。ホテルで同室した格闘技を目指す若者が、「これを毎日やらないと親父にぶん殴られるっす」と言って、主人公の目の前で黙々と500回のスクワットをします。常人では100回でダウンするのにそれは見事なスクワットだ、と主人公は舌を巻きます。そんなに凄い物かと調べてみたら単にしゃがんだり立ったりするだけ。なあんだ、と思いました。
その頃、私は早朝のジョギングを日課としていました。5㎞前後を30分くらいで走っていました。休日は9㎞のコースを50分。3㎞くらい走っているといわゆるランニングハイになり、どっぷりとハマッていました。ただし、冬になって雪が積もると走ることはできません。そこで取り入れたのがスクワットでした。
ゆっくりと5分で100回のハーフ・スクワットです。女子プロレスラーのように500回しました。ですから計25分です。夢枕獏さんは「見事なスクワット」だと言っていましたが、実際にやってみるとどうってことはありません。でも、はじめは20回程度で大腿四頭筋が痛くなりましたが、100回やれるようになると、その後は痛みは感じなくなり、回数を増やすことができました。
さて、ここからが本題です。いったい500回ってどう数えるのでしょう?
はじめはピアノのレッスンに使用されるメトロノームに合わせてやってみましたが、どうも調子がつかめません。カチッカチッという音が神経にさわるだけです。
二桁なら何とか数えられますが、「213、214、215、216、‥‥‥」なんてとても無理。そこで思いついたのが両手の指を折る方法です。10数えるのは無意識にできます。10数えるごとに指を1本ずつ折っていきます。両手で100まで数えられます。100まで行ったら今度は体の向きを90度変えます。要するに南に向かって開始したら今度は西。そんな調子で北、東、南にと戻ると500回になります。
300回になると汗がタラタラと顔や肘から床まで流れます。そこで足もとにタオルを敷きます。そんなに広げなくてもふつうのタオル1枚で充分。300回くらいでランニングハイも感じるようになります。どこでもできるし第一お金がかからない。
そろそろ雪の季節。皆さんも意外に楽しいスクワットを始めてみませんか。実は私、現在500回はしていません。ウォーキングに合わせて120回にとどめています。年ですから。
第300回 忙酔敬語 スクワット500回