ちかごろ心身医学会が元気がない。
6月17、18日と2日間にわたって坂野雄二会長のもと、札幌で日本心身医学会総会が開催されましたが、参加人数は600人ほど。それに対して3月4日の日本東洋心身医学研究会にはスポンサーつきで会場が東京ということもありますが、かるく1000人は越えました。※その後、300人前後と判明しました。
心身医学関係の総本山はやはり日本心身医学会ですが、日本心療内科学会、日本女性心身医学会などに細分化するうちに勢いが停滞してきました。
当院の郷久理事長が奔走して企画した企画シンポジウム18「女性心身医学診療の実際と将来」の会場に集まったのは、当院の3名の心理士、高橋円先生など、ほとんど見知っている人ばかりでした。
郷久先生は、さがらレディスクリニックの相良洋子先生と座長をつとめながら、「女性心身医療の実践」という演題で発表もしました。
先生が札幌医大および当院で診療した心身症の患者1万人以上の統計と、スピリチュアルな体験をした症例についての報告でした。
この準備のため、当院の21年分のカルテ全部に目を通すという気の遠くなる作業を何ヵ月にもわたって続けました。
それに対して私は、この数年にたずさわった2名の腹痛を訴える患者さんについて報告しようとしたところ、郷久先生に言われました。
「先生は、大学教授だったらそろそろ定年だよ。良導絡(鍼治療)の成果を発表して欲しいな‥‥‥」
そこで思い出したのが、2009年、香港中文大学で行った講演でした。延べ100例の女性の骨盤痛に対して行った皮内針による対角線療法です。
もちろん英語での発表で、屯田語しか話せない私にとって大きな試練でした。しかし、2週間によるスピーチの自主トレを行い、イントネーションにオーバーに抑揚をつけて発表したところ、教室に集まった50名ほどの参加者から5回も笑いを取るなどして大成功でした(こうした外国での講演会では笑いを取らなければなりません)。
その後、それを日本語にしてあちこちで発表しましたが、今回のような正式な学術講演会での発表ははじめて。発表した内容はいずれ心身医学会誌に英文とともに投稿しなければならないので、やっと日の目を見ることができました。
シンポジウムは、その他、相良先生「更年期障害の治療における心身医学的視点の重要性」、森村美奈先生「女性診療の視点による心身医学教育」の2題で、計4題。
やはり異彩を放ったのは私の演題でした。心身症の治療には時間がかかると言われているのに、100例中95例が短時間で痛みが消失したからです。
心身症は難しいと思われがちですが特別な病気ではありません。自分では自覚していないストレスが原因となる身体疾患です。非特異的腰痛がその典型です。
私は、鍼灸治療院に来る患者さんのほとんどは心身症ではないかと考えています。
まず心身症ありき。まず患者さんに直接触れましょう。それでダメなら専門医療機関への紹介。患者さんの負担も軽くなりますし、そもそも医療費の削減にもつながります。
第289回 忙酔敬語 まず心身症ありき