職業柄、女性アスリートが思わぬ失敗をしたとき、
「ひょっとして月経にでもぶつかったのかな、それともPMS(月経前症候群)で体調を崩したのではあるまいか?」と考えることがしばしばあります。イヤですねえ。
ピルはドーピングにはひっかからないので、欧米の選手はほとんど服用しています。日本のアスリートは律儀にもガマンしている場合が多く、私のような心配を招くこととなります。
低容量ピルは月経痛を軽くして、月経前の不快な症状も軽減してくれます。それでも通常通り服用していると28日周期で出血にみまわれます。ピルによる出血は通常の月経よりも少ないとはいえ、それでも不快に感じる女性もいます。
ここで登場したのがヤーズフレックス。別にバイエル薬品株式会社の宣伝ではありませんが、ちょっと解説します。
夏休みや修学旅行の時期になると「生理をずらして欲しい」と言って受診する女性が多くなります。こうした場合は力ずくでずらさなければならないのでプラノバールといった中容量ピルが必要です。中には吐き気がして気分が悪くなるので、あらかじめ吐き気止めと一緒に処方することもあります。
かように女性は生理にまつわる様々な問題をかかえていて実に気の毒なことです。
そもそも毎月、月経が訪れるというのは生物学的は無駄なことで、妊娠したいときに排卵するやり方が省エネです。
生理不順の女性にホルモン療法をして、その結果、生理痛で苦しむというのは本当に良いことなのか?、最近、疑問に思うようになりました。
現在、低用量ピルとして様々な製剤が出回っていますが、マーベロンやルナベル、あるいはヤーズなどの一相性のピルは、生理の調整をするのに便利です。
マーベロンの処方を希望されてきた女性が、28日周期で飲むにしてはやけに早く受診するので確認したところ、
「毎月生理があるのは面倒なので2シート続けて飲んでます」とのこと。
欧米ではすでに2周期どころか3周期で服用するのが一般的になっているのは知っていたので、
「ちょっとお金はかかるけど良いことですね」と、そのままの続行を支持しました。
このように基本的には一相性のピルならどれでもかまわないのですが、本来の服薬指導とは異なるため、まじめな人は後ろめたさを感じます。
この点、ヤーズフレックスは堂々と120日まではOKと太鼓判を押しているので安心して続けられます。しかし、120日にもならないうちに出血が起こった場合は4日間、休薬して、それからまた再開となります。
マーベロンやルナベルの場合は休薬は7日間です。
ヤーズフレックスを見ると、白い偽薬がなく全部、ピンクの実薬です。
「混じりっけなしの純品だね」と言うと、
「その言葉、使わせてください」と、
バイエルの営業マンは嬉しそうに申しておりました。
第287回 忙酔敬語 生理からの解放