佐野理事長ブログ カーブ

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第255回 忙酔敬語 スーパーコンピューターと人間の戦い

囲碁の名人がスーパーコンピューターに挑戦して勝った負けたと取りざたされています。私はアナログ人間でパソコンやスマホでさえ扱うのに四苦八苦していますが、こうした頭脳的なゲームでは、いずれはコンピューターが勝つのは当たり前だと考えています。
囲碁のソフトゲームはすでに市場に出回っていて、当院の当直をお願いしている山本先生は熾烈な戦いをしています。負けが込むとソフトの設定を低くしますが、現在は絶好調で4段に設定して互角に勝負しています。
コンピューターはそれまでの経験を確実に蓄積して、ウッカリとか気の迷いとかいうのがないので、スーパーコンピューターともなればどんな名人にもいずれは勝つはずです。これで人類が人工知能に負けると恐れるのは馬鹿げています。コンピューターは人間が開発したのですから、単にすぐれた道具を使用しているのにすぎません。
実際に趙治薫名誉名人とスーパーコンピューター「ZEN」の対戦の映像を見たとき、趙名人の本当の相手は「ZEN」の開発者の加藤英樹氏だという印象でした。趙さんが苦渋のはてにパチリと打つと加藤氏は楽しそうに「ZEN」の画面を見てパチリと打つ。加藤氏は「ZEN」を利用しているにすぎないのです。結局、「ZEN」は敗れましたが、趙名誉名人は「ZEN」は確実に強くなっていると言いました。
人工知能が勝手に進化した世界をパニック的に描いたシュワちゃん主演のSF恐怖映画『ターミネーター』は確かに面白かったけど、ハチャメチャな内容で冷静に考えると説得力がありません。
ロボットと人間がうまくいった世界を描いた作品としては、『鉄腕アトム』が古典となっています。手塚先生は、ロボットの方に同情的で、その他、人間的なロボットが迫害にあって次々と自殺する作品があります。
筒井康隆さんの小品『お紺昇天』は、まだカーナビが普及していない、今から20年以上も前の作品です。「お紺」とは人工知能を搭載した紺色の車です。持ち主が仕事を終えて乗車すると優しく声をかけてくれます。そして色々な愚痴を聞いてくれます。
私の車のカーナビは一応、女性の声で案内してくれますが、とんでもないルートを指示したり、うるさく「一時停止です」などとしつこいので、消音にしてしまいました。
それにひきかえ、「お紺」は実に良くできたコンピューターです。車の持ち主はだんだん「お紺」に恋心を抱くようになりました。筒井さんは用意周到で、未来社会では人間と人工知能が感情的に親密になるのを防止する法律があることを設定しています。そのため、コンピューター付きの車がある程度の年数が過ぎると廃車にしなければならなくなります。男性は泣く泣く「お紺」を廃車にします。「お紺」も「私、幸せだったわ」と言いながら昇天します。
以上、うろ覚えなので、詳しく知りたい方は是非実際の作品を読んでください。筒井さんの奥様もご主人の作品の中で一番お気に入りとのことです。
医学の世界では、とっくにコンピューターの時代です。医師は患者さんを触ることもなく、検査結果や画像診断に頼りきりです。患者さんとのやり取りも緻密にデーターをインプットしていけば優秀なロボットドクターができることは必然かと思います。しかし、その背景にはしっかりインプットできる人間が必要であることは言うまでもありません。