佐野理事長ブログ カーブ

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第181回 忙酔敬語 指しゃぶり問答

某新聞の健康欄での相談。〈13歳の娘。指しゃぶりをやめられず、困っています。それまでは睡眠中だけだったのですが、最近は勉強中にもしています。歯並びは少し前歯が出ていますが、歯科検診で指摘されるほどではありません。今後、どのようにしたらいいか教えてください。〉
この質問をふられた小児歯科医の先生の答えの抜粋。〈・・・。乳児期のしゃぶる行為は本能的なもので、ほとんどの乳児にみられる行為です。幼児期になると歯でかむことを覚え、しゃぶる行為には気分を静める要素が大きくなります。・・・。遊びやおしゃべりで手や口を使うようになると、頻度が減ってきます。ただ、①指がとても好き②気分安めの助けになる③無意識で習慣的に行うなどの理由で続く子はいます。・・・。長時間、強い力で吸っていると、入っている指の分だけ前歯が前後に開いたり、上あご全体が前に出たり、上の歯列の幅が狭くなったりすることなどがあります。3歳を過ぎると目立ってきます。今回のケース・・・。無意識に行っている癖の一種ではないかと思われます。歯並びにもほとんど影響が出ていないなら、問題が大きいというわけでもなさそうです。まずは本人の自覚を促すことが必要でしょう。・・・。歯科を受診し、歯科医に頻度が増えると、歯にどう影響が及ぶか話をしてもらうといいでしょう。・・・。〉
近ごろマレに見る珍回答です。と言っても小児歯科医の先生のせいではありませんよ。小児歯科医にふった担当記者の責任です。13歳になっても歯並びにほとんど影響がないのですから心理的な面を重視すべきです。しかし、「①指がとても好き」は私のツボにはまり思わず笑ってしまいました。
私も指がとても好きな子でした。汗のためかやや塩味がして好きでした。夜、寝る前には必ず左の親指を吸っていました。右手の方は毛布の毛をむしって小さな毛玉を作るといった奇癖がありました。あまりにも長時間しゃぶったとき指の爪がうるけて剥がれ、さすがに驚愕し、ガバッと起きて父親に見せに行ったことが何度かありました。父は医者ではありませんが、代々続いた田舎医者のせがれなので、少しもあわてず笑いながら絆創膏で固定してくれました。チビの回復力は大したもので1日くらいで爪はくっつきました。この辺の親父の行動は評価できますが、そもそも指しゃぶりの原因は親父にあります。夜尿症の私に水を浴びせて折檻したり、2歳年下の聡明な妹をえこひいきして、ボーッと考えごとをしていた私を智恵遅れと思っていたふしがありました。まぁ、昔のことを今さらとやかく言っても仕方がないので繰り言はこれでおしまい。
てなワケで次女が指しゃぶりをしたときは基本的にソッとしておきました。しかし、友人一家と知床の近くのウトロで昼食をとったとき、オロカにも次女の指しゃぶりを話題にしてしまいました。自尊心を傷つけられた3歳の娘はサッと顔色を変え、それ以後は居直ったかのようにチュッパチュッパと指しゃぶりの回数が増えました。この事件は佐野家の歴史で「ウトロの屈辱」と銘記され、二度と同じ過ちをしないことを誓いました。
一時、ハリウッド映画でアニメの実写版が流行ったことがありました。『ポパイ』、『ディック・トレーシー』など。両方ともアニメの特徴をさらに強化し、色彩のセンスも良く、私のお気に入りです。『ポパイ』では、悪役のプルートが指しゃぶりをしながら眠っているシーンにギョッとしました。プルートにも人に言えない悩みがあったんでしょうね。