佐野理事長ブログ カーブ

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第175回 忙酔敬語 乗りかかった船

五十代の患者さんから手紙が届きました。
「昨日、ご紹介いただいたO内科へ行ったところ、リウマチの可能性があると言われました。ただ、押されても痛くないのでリウマチだとしても軽度で今治療すれば比較的早く治るかもしれないと言われました。そして注射を打って薬を処方していただきました。すると今朝は、今までベッドに張り付いたように痛くて1時間も起き上がることができなかったのに、嘘のように普通に起きることができました。何か月ぶりに元の自分に戻れそうで本当に嬉しかったです。これもひとえに院長先生のおかげです。まったく専門外の患者である私を診てくださり、その上、良い先生を紹介してくださり本当に感謝しております。本当にありがとうございました。‥‥‥‥‥‥‥。」
この患者さんは今年の1月から首などが痛くなり、それがだんだん強くなり体中が痛むようになりました。整形外科や神経内科を受診しました。MRIや血液検査でも異常はなく、痛み止めや安定剤を処方されましたが、いっこうに良くなりません。そこで更年期から来るものかと思い当院を受診しました。
診察をしたところ痛い部分は全身で、どこが特別に痛いというワケではありません。下腹部痛はないので確かに私の専門分野ではなさそうです。患者さんも内診などの婦人科的な診察は希望していないので、とりあえず、筋肉の凝りを改善するためにデパス(0.5)1錠を1日2回と慢性疼痛に効く疎経活血湯を7日分処方しました。
6日後、まったく効果がないとのこと。この1か月ばかり微熱が続いているというので血液検査をしました。そしてトラマールという慢性疼痛の薬を処方しました。検査に異常がなければ私の高校の同期が麻生でペインクリニックを開業しているので、そこに紹介するつもりだと説明しました。
翌日、トラマールはただ眠くなりだけでデパスの方がまだマシだと受診。ちょうど血液検査の結果も出ていました。CRPという炎症をしめす検査が上昇していました。これは何かあるぞ、と思いました。
さっそくO先生のクリニックに電話しました。O先生はリウマチの専門医だけでなく心身症にも造詣が深い名医です。5,6年ほど前、線維筋痛症についての勉強会がありました。本州の大学の教授の特別講演よりも前座的なO先生の講演の方がレベルが高いので感心しました。さぁすがO先生!
「なるほど、CRP高いですね。分かりました。ちょっと待ってもらうかもしれませんが予約を入れておきます」
これで一安心。
「ご専門でもないのに、ありがとうございます」
「乗りかかった船です。受診された患者さんには納得して帰っていただくのが医者としての義務ですから」
ありがたいことに当院の近くには安心して紹介できる施設が数々あります。メンタルな患者さんをいつでも引き受けてくれるG病院。めまい専門医のいるS耳鼻咽喉科クリニック。救急のTK病院。外科のY先生のいるT病院。その他にもいろいろな施設にお世話になっています。これだけそろっていれば患者さんも安心です。