一人暮らしの女子大生から朝日新聞の「悩みのるつぼ」に、中学も高校もずっと女子校で、「男女共学の青春を楽しみたい!」と相談がありました。答えるのは日本で一番ケンカが強い女性と言われる上野千鶴子先生。回答の見出しは「青春は友情をはぐくんだあとに」と書かれていました。上野先生ご自身なら大丈夫でしょうが、私は「何だか危ないなあ」と思いました。そこで思い出したのがピンク・レディーの歌、阿久悠作詞『S・O・S』。
男は狼なのよ 気をつけなさい 昔のひとが いうことみたいだと
年頃になったら つつしみなさい ぼんやりきいてたら
羊の顔をしていても 心の中は 駄目 駄目 あ─駄目駄目よ
狼が牙をむく そういうものよ S・O・S S・O・S
‥‥‥‥‥‥‥‥ ほらほら よんでいるわ
‥‥‥‥‥‥‥‥ 今日もまた誰か 乙女のピンチ
古い歌ですが、「駄目、駄目、あー駄目駄目よ」はまだ新鮮でしょ? でもないか‥‥。ここでさらに昔というかはるか大昔の『万葉集』の雄略天皇の歌を思い出しました。
籠もよ み籠持ち 掘串もよ み掘串持ち
この丘に菜摘ます児 家聞かな 名告らさね
そらみつ大和の国は おしなべて われこそ居れ しきなべて われこそ座せ
われこそは告らめ 家をも名をも
『万葉集』の巻頭を飾る、天皇が年頃の娘をナンパするという一見のどかな歌ですが、雄略天皇は、有力皇族や豪族を征伐したりして、相当なワルだったと伝えられています。
「ハイ、私は○○の家の△△という者です」と答えようものなら、あっという間に連れ去られるは当時の常識でした。てなわけで今時の若い娘が考えもなしにメールアドレスを交換するのを危惧するしだいです。
B級映画『96時間』は、元CIAのオヤジが誘拐された愛娘を救い出すアクション・ホームドラマです。まだハイティーンで危険だからやめろとオヤジは反対しますが、娘はその友人とともにパリに旅立ちます。はたして娘達は人身売買組織に拉致されます。オヤジの元同僚によると統計的に96時間以内に取り戻さないと奪還は不可能とのこと。あせったオヤジはただちにパリに向かい犯罪組織に戦いをいどみます。現れる敵をバッタバッタとたたき殺して、ついにアラブの富豪に高値で買われて船に乗せられて行く娘を寸前で助けますが、オツムの足りない娘の友人は可哀想なことに薬(ヤク)づけにされたあげく死んでしまいました。たった3、4日間でこんなことになるなんて、まさに荒唐無稽な映画でしたが、二人の娘を持つ親としては身につまされる思いで見入ってしまいました。
多くの女性は男よりも勘が良く警戒心が強いので、こんなバカな目に遭うことはないでしょう。しかし、社会的な経験がなく、しかも男女の機微も分からない冒頭の女子学生には不安を覚えます。杞憂であれば良いのですが・・・。