院長ブログ カーブ

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第94回 忙酔敬語 たかがカンジダ、されどカンジダ

札幌市から『How To Safer Sex』なる名刺大のパンフレットが送られて来ました。思春期の患者さんに利用してほしいというのです。このパンフレットは10年以上も前から送られて来ましたが、気にくわない点が2つありました。
1つはどうして英語かということです。初めてこのパンフレットを見たとき、英語に不案内な私はとっさには意味が理解できませんでした。しばらく見ているうちに「安全な性交渉の方法」なんだなと分かりました。そして日本語で書くと、父兄(現在なら父母ですね)から「寝てる子を起こすな」的なクレームが来る恐れがあるから、あえて英語で書いたのではないかと邪推しました。英語では、私と同様にピンと来ないから何事もないと考えたんでしょうか。人をバカにするな!と腹が立ちました。あるいは英語の方がカッコイイから若者にウケルとでも思ったのでしょうか。これもまた日本語をバカにするな!です。
もう1つは性感染症近辺の疾患のなかにカンジダ症がまぎれ込んでいることでした。今回のパンフレットにはただし書きとして〈カンジダは膣や口に普段からいるので、抵抗力が落ちたときに発症することがある〉と記載されていたので、気分はおさまりました。
パンフレットのただし書きのようにカンジダはあちこちに常在しているため、性交渉をしなくても体調が悪ければ発症します。鵞口瘡といって赤ちゃんの口の中がカンジダ菌で白くなる病気(?)もあります。カンジダを持っているお母さんから生まれた赤ちゃんに多いとされていますが、お母さんがカンジダでなくても発症します。(?)をつけたのは、赤ちゃんが元気なら自然に治るため、ほとんど治療する必要はないからです。
先日も女子高校生が外陰部の痒みが1ヵ月も続くと言って母親といっしょに受診しました。パートナーはいないようです。そっと診察するとカンジダで外陰部が真っ赤になって本当に痒そうでした。ふつうは腟内を洗浄して膣錠を入れるのですが、まだ性体験もないのでかわいそうです。そこで軟膏と内服薬を処方しました。
カンジダは免疫力が衰えた人にとり憑きます。風邪をひいて抗菌薬を飲んだ人、妊婦さん、糖尿病の患者さん等々‥‥。カンジダの栄養源は動物性多糖類のグリコーゲンです。腟内のグリコーゲンの産生には女性ホルモンが必要です。ですから幼い女の子や老年期の女性はめったに発症しません。妊婦さんは、胎盤から女性ホルモンが大量に作られるので、カンジダにかかりやすくなります。60歳以上の女性がカンジダになったり、年に何回もカンジダにかかる患者さんの中には糖尿病が誘因になっていることがあります。
そうそう、カンジダの症状を説明するのを忘れていました。自覚症状としては先ほど紹介した女子高生のように外陰部の痒み、そして酒粕状のおりものです。欧米ではカッテージチーズ状と表現されています。
診断はおりものを顕微鏡で見てカンジダの菌糸がないかどうかを調べます。確認のためにおりものを培養すると2日目で結果が出ます。
治療は、腟内を洗浄して酒粕状のおりものを洗い流して腟錠を入れます。腟錠には婦人科の外来で入れるタイプと自分で入れるタイプがあります。そして痒い部分に塗る軟膏も必要です。先ほどの女子高生のように内服薬を処方することもあります。
そして何よりも大切なのは、ゆとりを持った生活をして疲れをためないことです。それこそ「お大事に」です。