佐野理事長ブログ カーブ

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第93回 忙酔敬語 沖縄の空(日本良導絡学会で)

10月19日と20日、沖縄で日本良導絡自律神経学会が開催されました。私は毎年、一般演題をひっさげて参加していますが、今年はさらに公開実技という重荷を背負うことになりました。
良導絡学会についてはこのブログでも何回かとりあげましたが、ごく簡単に説明すると、鍼灸治療に使用される穴(ツボ)や経絡を電気生理学的に研究する学会です。最近、参加者が減りジリ貧状態で、今回は遠方の沖縄ということもあり、さらに参加者が減りました。そこで、私が公開実技をしなければならないハメとなりました。
この実技を見学する方の多くは鍼灸の先生です。まさに釈迦に説法です。本部の先生から「北海道で誰か公開実技をする人はいないか」とメールが来たのですが、誰も思い浮かばず、発作的に「『良導絡と陰陽太極鍼法』というお題ですが自分でもいいですか?」とメールを返したところ、あっさり採用されました。今までのブログでも自慢タラタラと書いてきましたが、いざ、プロの鍼灸の先生の前で実技をすることとなると途方にくれてしまいました。この治療法を披露したいと思っていた対象は医師だったからです。しかし、良導絡学会には私も含め、医師も少なからずいます。「まあ、いいか。べつに殺されるわけでもないし」と腹をくくって沖縄に行きました。
陰陽太極鍼法とは患部と180度反対側に鍼治療をする方法です。原因不明の下腹部痛を訴える患者さんには最適な治療法です。帯広の吉川和子先生のご講演を聴いて、私なりに産婦人科領域の疼痛に応用してみました。初めてこの治療法を行ったのは、右の鼠径部(脚のつけ根)が痛くて歩くこともままならない9か月の妊婦さんに対してでした。以前だったら痛い部分に鍼を刺したのですが、場所が場所なだけに患者さんは赤ちゃんのことが心配でイヤがりました。そこで陰陽太極鍼法のことを思い出したのですが、さあ、どこが反対側だか分かりません。そこで鍼灸師のN先生に電話して教えを請うたところ、「反対側の肩の後ろあたりに治療点があるはずよ」と、反対側の経絡の図までFAXしてくれました。さっそく患者さんの左肩の後ろを探ってみると「何だか痛気持ちいい」場所がありました。そこに鍼をチョコッとしてみたら、アラ不思議、患者さんはスタスタ歩けるようになりました。それ以来、原因不明の下腹部痛の患者さんにこの治療法を行うようになりました。その成果を吉川先生に話したところ、先生はとても喜んでくださいました。下腹部痛で鍼灸治療院を受診する患者さんはメッタにいないからです。陰陽太極鍼法は本来長い鍼は必要としません。ごく浅く刺すだけで十分です。最近は円皮鍼といってシールにトゲのような物が附いた鍼を使うようになりました。それ貼っただけでたちどころに痛みは消えてしまいます。ただし治療点(穴)はピンポイントだけに正確に特定しなければなりません。そこで登場するのが、わが良導絡学会の基本的な兵器、ノイロメーターです。穴は電気抵抗が低いのでノイロメーターを使用すると正確な治療点が分かります。最近は下腹部痛だけでなく手足の痛みや腰痛にまで手を出すようになりました。
以上、述べたようなことを、H先生の座長のもとで講演しました。参加者は思ったとおり多くはありませんでしたが、みなさん熱心に聴いてくれました。実技もあちこち痛い人にモデルになってもらって治療したところ、効果はたちどころに現れたので面目をほどこすことができました。沖縄の青い空の下、良い時を過ごしました。