院長ブログ カーブ

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第8回 忙酔敬語 赤ちゃんが泣く理由

当院では、1か月健診で受診したお母さんに、エジンバラの産後の抑うつ尺度という質問用紙に記入してもらっています。そして抑うつ尺度が高いお母さんにはどんなことで悩んでいるのかを確認しています。初産のお母さんたちの中で一番多い悩みの原因として、子育てに対しての不安があげられます。「赤ちゃんが泣くのにどうしていいのか分からない」と言うのです。実家のお母さん(赤ちゃんの祖母)に相談しても「抱き癖がつくからほうって置いた方がいいよ」と言われるケースも多々あります。そのような場合、私は「赤ちゃんの気持ちになって考えてみようね」と言うことにしています。
赤ちゃんは危険に対して自分では何もできない無防備な状態です。目を覚めて誰もいないと不安になり「一人にさせないで」と泣いて訴えるのです。自然界のほ乳類の赤ちゃんは、泣いてもほうって置かれることはまずありません。鷹やオオカミなどのかっこうの獲物になるので、すぐ母親が来てあちこちなめたり安全な場所に連れて行ったりします。家で飼っているペットの犬も野生のカンが残っているので、赤ちゃん語が分かり、赤ちゃんが泣くとワンワンとお母さんに知らせに行きます。ですから私は「犬に負けるな」とお母さんをはげまします。中には何の反応もしめさないバカ犬もいますが、きっとこの犬は子犬のときにいくら泣いてもほうって置かれたため、心が病んでいるのでしょう。
いくら泣いても誰も抱っこしてくれないと「どうせ泣いても無駄なんだ」と、他人への信頼感と自信が育まれなくなり、泣かない赤ちゃんになってしまいます。泣かない赤ちゃんは無表情で笑うことはありません。長じて中学生や高校生になると問題を起こし、両親にしっぺ返しすることになります。疲れたお母さんに「赤ちゃんは笑いますか」と訊くとたいてい「笑います」と答えてくれます。これは子育てがうまくいっている証拠で、「お母さん、よく頑張っていますね」とねぎらうと、お母さんは少し自信を取り戻してくれます。
一人で赤ちゃんを抱っこしているのは大変です。昔は「ねえや」という若い女中さんがいて、赤ちゃんの世話をしていましたが、現在の住宅事情では不可能です。お父さんがイクメンにならなければなりません。赤ちゃんの首がすわるようになればオンブという手があります。赤ちゃんはいつもお母さんと一緒で安心です。お母さんも両手があきますから家事など自由にできます。しかし肩がこります。やはりお父さんのイクメンが必要です。
まだ十代の若い女性が妊娠反応が出たといって、うれしそうに受診しました。エコーで診ると赤ちゃんが元気に育っているのが分かりました。「赤ちゃん語が分かるかい」ときくと、「お姉ちゃんがここで(当院)2人産んでいるので分かります」と自信たっぷりでした。赤ちゃん語が分かると本当に育児は楽しくなります。楽しく育児ができるように支援するのも私たちのつとめだと思っています。