院長ブログ カーブ

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第78回 忙酔敬語 プラセンタ 

プラセンタってご存じですか? いろいろ出回っているサプリメントの中でも効き目は確かな方です。疲れを取るのには最高です。しかし、値段が一月5000~6000円とちょっと高めです。プラセンタとはもともと胎盤のことで、胎盤から抽出された物質から作られた薬です。医療用の注射もあります。女性の場合、「メルスモン」が「更年期障害」と「乳汁分泌不全」で保険適応となっており、効き目はサプリよりもはるかに上です。別のメーカーで製造されている「ラエンネック」も中身はメルスモンと同じで、適応は「肝硬変」となっており男性にも注射できます。
「メルスモン」の注射は美肌効果もあるため皮膚科で使われることもあります。当院で実施するようになったきっかけは、当時39歳の女性が、「皮膚科では保険がきかず、2000円以上もするので、ここで保健適応で注射してくれませんか」と受診されてからです。その後、当の女性はしばらく受診せず注射液が余りそうになったため、更年期で「ホルモン補充療法をしても疲れが取れない」という患者さんに注射したところ、その効き目に患者さんともども驚き、さらに「メルスモン」を追加注文しました。そして「ひょっとしたらアノ女性は製薬会社の回し者か?」と邪推したりしましたが、女性はその後しばらくしてから定期的に受診するようになりました。もともとナカナカの美人で、「注射なんて必要ないのに」と思いましたが、女性の美に対する憧れはかぎりがないのですね。
「メルスモン」の原料は胎盤ですが、ホルモンやタンパク質は含まれておらず、そのためアレルギーなどの副作用はほとんどありません。アミノ酸などの未知の物質が有効成分となっているのですが作用機序はいまだに不明です。未知の物質の中には狂牛病などのウィルスが含まれている可能性も否定できないので、厚労省は「メルスモン」を受けた人は出来るだけ検血をしないように勧告しています。しかし昭和34年に認可されて以来、そのような事例はありません。製薬会社も材料の胎盤には細心の注意を払っているようで、健康な褥婦さんの胎盤に限り、しかも狂牛病などが発症した過去(現在も)がある海外に行った可能性のある女性は除外しているとのことです。
プラセンタが開発されたのは第二次世界大戦中で、旧ソ連のフィラートフ博士が胎盤の健康増進作用に目をつけたのが始まりでした。中国では古くから胎盤は栄養の塊なので、乾燥して漢方薬の材料にされていました。また、褥婦さんの体力回復のために(地方によりますが)食べられたりしています。日本では三林龍吉教授と稗田憲太郎教授が製品化に貢献しました。当時、稗田先生は満州医科大学の教授で、陸軍の憲兵がウロウロとかぎ回ってウルサイので、研究所の前に番犬代わりに2頭のトラを鎖につけて飼い、憲兵を寄せ付けないようにしたそうです。この変の所、ちょっとアヤシゲで、プラセンタそのものに対する信頼も下げてしまいそうですが、面白いのであえて書いてしまいました。
先日も、体調が悪くて4,5軒の病院に行っても原因が分からず、当院を受診した更年期の患者さんがいました。軽いパニックもありそうなので向精神薬を処方しましたが、2日後にさらに悪くなったと受診されました。そこで「メルスモン」を毎日のように注射したところ、初診から一週間ですっかりラクになり、とても喜んでくれました。その後は1,2週間に1回の注射で落ち着いています。ただしプラセンタは誰にでも効くというわけではありませんよ。5,6回注射しても効果がなければ別の治療が必要です。