院長ブログ カーブ

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第68回 忙酔敬語 ツマラナイ講義  

私は開業医のハシクレですが、何のご縁か、2,3の大学で年に5,6回ほど講義をしています。目標は学生を眠らせないこと、できたらハーバード大学のマイケル・サンデル教授の白熱教室、あそこまでやれたらなと思っています。しかし、このブログを読んだ学生諸君は「お前のドォーコがマイケル・サンデルなんだ」と笑っていることでしょう。まったくそのとおり、書いているうちに顔が赤らんできました。もっともサンデル教授の専門は政治哲学なので、あのように学生との対話形式の講義ができるのですが、私の場合は日常の臨床経験を中心として、ほとんど一方的に語るのでやはり無理かな。
ツマラナイ講義は罪なことです。学生時代のほとんどの講義は退屈だった。だいたい講師の先生に熱意がなく、進学時代(私の頃は正式な医学の講義を受けるのが3年目からという実に無駄なことをしていました)の物理の講義では途中で退席する学生が続出しました。教授はムッとして「君たちは無礼である」とぼやきました。すると勇気のあるS君が手を挙げて「先生の講義がツマラナイからです」と言いました。さすがに教授は何も言えず黙り込んでしまいました。S君、今思ってもカッコ良かったぞ! 何も取り柄のない私は教室から出てもとくに行く場所もないので、小説を読んだり、歌や俳句を作ったりしていました。だから成績は底辺をウロウロしていましたが、出席日数だけは問題ありませんでした。大学に行く意義は部活の柔道部に行くぐらいなものでした。練習はきつくて楽しくはなかったけれど先輩達からいろいろな事を教わったりして、それはそれでタメになりました。
こんな状態が原因だったのか、私が札幌医大に入学した当時は、医師国家試験の合格率が7割台で全国の医学部の最低レベルでした。しかし、私が卒業するあたりから最終学年の6年目は、実習が中心で、講義はほとんどなくなりました。学生は時間にユトリができ、自習をして国家試験に備えたので、国家試験の合格率は100%に近くなりたちまちトップレベルとなりました。もともと優秀な学生の集まりだったのです。ツマラナイ講義が足を引っ張っていました。本当にツマラナイ講義は罪作りでした。(平成24年度の医師国家試験合格状況を見ると札幌医大は43位とパットしませんでした。どうしたんでしょうねえ。逆に東大が30位と健闘しています。東大医学部は医師を志望する学生が少ないのか例年、札幌医大よりもはるか下位でウロウロしていました。)
もちろん中には魅力的な講義をする先生もいました。当院の郷久理事長もその一人で、先生の講義を聴いて産婦人科領域の心身症をやろうとこころざし現在の私があるのです。
私に講義を依頼している大学は、私の学識にはそれほど期待していないと思います。日常臨床のエッセンスを学生に伝えるのが私の役目だと考えています。今さら付け焼き刃の学問的な準備をして学生に話しても学生を眠らせるだけです。学問的なことは大学常勤の先生方に任せ、私は臨床の楽しさを学生に分かってもらい、ウケル授業をしたいともくろんでいます。でも、基礎知識はやっぱり必要。人に教えることは自分の勉強にもなります。正直言って、忙しい日常臨床の間に講義の時間を探すのは大変です。年に5,6回が限度です。でも学生が反応してくれれば気分転換になって生活のメリハリもつきます。「何だ、自分たちは佐野の気分転換かよ」と思わないでネ。せっかく生きているんだから人生、楽しもうよ。