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第64回 忙酔敬語 3分間鍼療

鍼灸治療院で治療している患者さんが、「鍼灸治療が必要である」という簡単な証明書を希望して受診してきました。医師からの証明書があると保険が適応されるので治療費が3割程度になるからです。私もほぼ毎日鍼治療をしているので、その患者さんがどのような治療を受けているのか興味がわき、「治療にはどのくらい時間がかかるのですか」と尋ねると「1時間くらいです」との返事でした。「へえ、大したもんだなあ」と感心しました。私の鍼治療のほとんどは2,3分で終わる、まさに3分間鍼療だからです。
治療院で治療を受ける患者さんのほとんどは腰痛や肩こりだと思います。しかし、中には西洋医学では治療が難渋している患者さんも集まります。こうした患者さんにはじっくり時間をかけた治療が必要です。
私が鍼治療をする患者さんの7割以上は妊婦さんやお産を終えた褥婦さんです。大きくなった子宮に圧迫されて坐骨神経痛が生じたり、恥骨や鼠径部が痛くてびっこをひいて歩くお母さんもいます。そこで3分間鍼療の出番となります。昔は坐骨神経痛の妊婦さんには長い鍼を坐骨神経に届くまで深々と刺し、ビリッと響かせて治療をしましたが、最近では左右反対側の前胸部にある中府というツボに小さなトゲのついたシールを貼っています。このシールには円皮鍼といって太さ0.2mm、長さ0.6mmの鍼がついています。若い妊婦さんには見えますが、私の老眼では砂粒のようにしか見えません。
この治療法は帯広の伝説的な鍼灸師、吉川正子先生の「陰陽太極鍼法」という講演を聴いたのがきっかけで思いついた方法です。実はそのときまで中府というツボの存在すら知りませんでした。ただ右のお尻が痛いので治療点は左の胸の上の方にあるのではないかと思い、そこを軽く触れると「気持ちが良い」というので皮内鍼といって長さ3mmの鍼を刺したのが始まりでした。痛みは瞬時にしてなくなり妊婦さんも私もビックリでした。中国人の褥婦さんが坐骨神経痛のため受診されました。そこで「鍼治療をしましょう」と言ったところドン引きされました。中国の鍼は太くて痛いからです。そういえば韓流時代劇「チャングムの誓い」や「ホジュン」で使われていた鍼は縫い針のように太かったなあ。あれでやられたらたまったもんではありません。「これですよ、これ」と言って小さな皮内鍼を見せるとやっと安心してくれました。そしてその効果にまたビックリ。
ただ皮内鍼は小さなピンセットを使わなければならないのでちょっとめんどう。そこで2年前から円皮鍼を使うようなり鍼療時間はさらに短縮されました。ただし、この方法は一点勝負なのでツボの位置を確実に押さえておかなければなりません。そこで登場するのがノイロメーターというツボ発見器です。私は良導絡といってツボと電気抵抗を研究する学会の会員です。ツボは電気抵抗が低いので、この器械で電気抵抗を調べると正確な治療点が分かります。自慢ではありませんが感というか経験というかこの器械を使っても、はじめに狙ったポイントから5mm以上はずれることはまずありません(やはり自慢か)。
私が鍼治療をする患者さんのほとんどは骨盤や下腹部を中心とした原因不明の痛みです。その他の自律神経症状にも鍼灸は有効ですが、そこは専門の鍼灸師の先生にお任せすることにしているので棲み分けの問題はありません。先月の朝日新聞にも出ていましたが、腰痛の8割以上は原因不明です。そして残念ながら鍼治療については触れられていませんでした。簡単な方法ですので機会があればぜひ世の中に広めていきたいと考えています。