院長ブログ カーブ

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第46回 忙酔敬語 「警察日記」と二木てるみさん

またテレビの感想です。11月27日(火)の当直のことでした。火曜日の夜はいつも「開運なんでも鑑定団」を見ています。私の場合、本物かどうかはテレビでも7割くらいは当たります。しかし、コレクターとしての趣味はないので安上がりです。その日に限ってNHK BSプレミアムの昔の映画「警察日記」が気になり、そちらにチャンネルを合わせました。これが正解でした。
1955年の映画で、舞台は福島県の田舎町です。福島といっても会津の山奥なので3.11の震災とは関係なさそうでした。人情味あふれるベテランの巡査を森繁久弥さんが、純情な若い巡査を三國連太郎さんが演じています。まだ、戦争の傷跡が人々の生活にも影響していて、幼い女の子と乳児が捨て子として登場します。森繁久弥さんが児童相談所などをはじめ町役場などいろいろな施設に引き取ってもらうように働きかけますが、「町民ではないのでうちの管轄ではない」と断られます。この辺、行政の縦割りの痛烈な批判となっています。結局、乳児は裕福な旅館に引き取られ、女の子は子だくさんの森繁久弥巡査が「一人くらい増えても大したことはなかろう」と引き受けることになります。しかし、ある夜、女の子が弟に会うために家を抜け出て旅館を訪れます。「シゲルちゃん」と女の子は涙を流します。沢村貞子さん扮する旅館の女将もそれに気がついて女の子を居間に招き入れます。そこへ方々探し回った森繁巡査も訪れます。弟に会った女の子はオイオイと泣き、周りの人々も涙を流します。そして私の涙腺も緩んでしまいました。女の子を演じたのは当時まだ6歳になるかならいかの二木てるみさんでした。悲しくて切なそうな表情やそぶりは演技とは思えないほど自然で、大人の名優達に全く引けを取りませんでした。私は二木てるみさんのファンで、その演技力にはいつも感心していましたが、6歳からこんな天才ぶりを発揮しているのを見て「ウーム」とうなってしまいました。
ここで思い出したのが1966年の映画「白鳥」です。学生の時、これもテレビで見ました。吉永小百合主演の悲恋物語です。万葉集の高橋虫麻呂の長歌がモチーフになっている作品です。「昔、真間の手児奈といううら若く美しい乙女がいた。自分を求めて二人の男が争うのを嘆いて自ら命を絶ってしまった」という伝説です。吉永小百合も婚約者がいながらチョイ悪の渡哲也に惹かれて、いろいろ思い悩んだあげく海に身を投じるという実にツマラナイ映画でした。しかし、渡哲也の妹で不治の病で床に就いている当時17歳の二木てるみさんの演技が壮絶でした。布団から顔を出しているシーンだけでしたが、渡哲也が吉永小百合に恋をしているのを敏感に感じ取り、「私、病気が治ったらお兄ちゃんのお嫁さんになりたい」と、かなり危ない台詞をか細い声で言った時はゾクッときました。
「警察日記」には、捨て子の話の他に杉村春子さん、殿山泰治さん、左ト全さんなどそうそうたる名優達が関わるエピソードも満載でした。その夜は途中で呼ばれることもなく無事に「警察日記」を見ることができました。涙を拭き拭きナースステーションの様子を見に行くと、ちょうど妊婦さんが風邪で受診するとのことでした。妊婦さんはインフルエンザの疑いがあったので麻黄湯という漢方薬を処方しました。夜中にお産もありましたが、とても順調で、実に充実した当直でした。