院長ブログ カーブ

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第45回 忙酔敬語 3分間診療について考える

「2時間も待ったのにたった3分の診療で終わってしまった」と取りざたされています。初診の患者さんに対しては30分以上時間をかけて、じっくりと診察するのが良医だとされています。確かにそうでしょうが現在の日本の医療事情からするとしかたのないことなのかもしれません。
先進事諸国の中で日本の人口に対する医師の数と医療費は最低です。こんな劣悪な状態でも日本人の平均寿命は世界のトップクラスです。これは我々医療者がいかに頑張っているのを如実に示しているといえます。この辺のところをもっと声を大にして主張するべきだと、元アフラックの会長でNPO法人ゴールドリボン・ネットワーク理事長の松井秀文さんが、「医療保険から見た日本の医療の現状」と題した講演で述べられていました。イギリスでは病気になると、まずジェネラルドクター(総合診療医)が対応します。30分くらいじっくり診察してから薬の処方をするそうです。癌になって専門医に診てもらう時は1時間以上かけて説明します。これは医師が日本よりも人口比で圧倒的に多いから出来るのです。北欧では予約しても6時間待ちで、救急でも1時間待たされ、その間に何かあっても仕方のないこととされているようです。医師の人口比が日本の倍以上でですよ。そのかわり順番が来れば患者さんが納得できるよう診療を受けられるようです。日本だったら大変です。救急ならふつうならどんな時間でも救急車が来て対応してくれます。不幸にしてたらい回しにされることもありますが、そんなことになったらニュースになるお国柄です。健康保険が不備なアメリカでは保険未介入の人はピストルで撃たれても放って置かれるそうですが、本当かなあ。でも医師の数も医療費も世界のトップなのに平均寿命が短いという数字がここのところを物語っているのかもしれません。
ところで日本はワクチン後進国といわれています。麻疹が流行するのは世界の恥であるともいわれていました。イギリスやオーストラリアなどでは頸がんワクチンの摂取率や頸がんの健診率が80%と行政がしっかりと介入しています。日本の行政は方針が定まらず、最近、風疹が流行したりして何をやっても中途半端な感じです。これは国民の意識にもあると考えられます。日本では病気になっても基本的にいつでもどこでも治療を受けることが出来ます。そのため、予防への危機管理意識が低いのではないかと私は考えています。
偉そうなことを述べてきましたが、当院も「3分間診療」といわれても言い訳が出来ない状態です。ここで威力を発揮するのが東洋医学でいうところの「望診」です。「望診」とは患者さんの顔色や表情、全体からただよう雰囲気を総合的に判断する診断法です。私の漢方の師匠(かってに弟子になってしまいました)の一人である富良野幾寅の「けん三のことば館クリニック」の下田憲先生は、「『望診』で8割診断がつくよ」と言われています。私も8割まではいかなくても6,7割くらいは分かります。問診票を読んでから患者さんが診察室に入られた段階で、大体診断がつきます。そこで確認のためいくつか質問すると「どうして分かるんですか」と患者さんは驚きます。こうなったらしめたものです。5分くらいで診療は終了です。ただ、じっくりとお話を訊かなければならない方もおられます。こうした場合は「心の交通整理をしてみようね」と説明して、心理士にカウンセリングを依頼します。患者さんの情報は、受付の様子や、看護師、助産師の対応からも得ることが出来ます。こうして総力を結集して外来診療を行っています。