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第40回 忙酔敬語 仏語圏アフリカご一行様

10月16日、仏語圏アフリカから9名の助産学校の指導者などの先生方が当院に見学に来られました。ベナン、ブルキナファソ、モーリタニア、セネガル、コンゴ民主共和国、コートジボワール、ニジェールの7カ国の方々で、乳児死亡率の削減、妊産婦の健康の改善などを目標に、道内を中心として10月1日から11月9日まで視察したり研修を受けたりしているのです。当院には6年前から訪問されているので、私は親しみを込めて「アフリカご一行様」と呼んでいます。
皆さん背が高く、民族衣装を着ている人もいるので圧倒的な存在感がありました。「ボンジュール」と挨拶して、3階の会議室にお連れしました。札幌医科大学の保健医療科の先生が1名と通訳の方が2名同行されて来ました。まず私が、自分は今年で60歳になるが、生まれたのは自宅で産婆さんに取り上げられたこと、医療施設でのお産はそれから5年ほどしてから多くなったこと、日本は実は単民族国家ではなく少数民族のアイヌがいて昔はアイヌ特有の助産のノウハウがあったことを話しました。上から目線ではないことを伝えたかったからです。続いて才田師長が当院での妊婦健診や保健指導、産後の支援などについて解説しました。通訳の女性は素敵な方で、スムーズに意思疎通ができました。
院内の見学をすませた後、その日は予定の帝王切開があったので、患者さんとご家族の了承を得て、手術室の隣の部屋から小窓を通して見学してもらいました。皆さん、乗りが良いので私もテンションが上がり手術は順調で、赤ちゃんが出た時は手を打って喜んでくれました。私もVサインをして見せました。最後にディスカッションをしましたが、帝王切開でお腹の皮膚を合わせる時にステップラー(ホチキスのような物です)を使用したのが驚きだったようで、「抜く時は痛くないのか?」という質問をいただいたりしました。記念撮影をしましたが、皆さん背が高いのに、座っている人の中では私が一番頭の位置が高く、アフリカの方々がいかに足が長いかを思い知りました。
仏語圏アフリカは、昔、フランスの植民地だった所です。古代ローマは領土内にはくまなく文明をもたらし、各地に闘技場や大浴場を建設しました。しかし、近代の植民地ではそのままにされたようで、仏語圏アフリカにはフランス語しか残りませんでした。また、7カ国にはさらに様々な部族がいて、公用語のフランス語以外にも部族特有の言語も使用されているとのことでした。日本は短期間に医療の水準を発展させたため、アフリカご一行様が視察に来られたのですが、一枚岩ではないのでなかなか大変だなと思いました。
仏語圏アフリカにはフランス語しか残されなかったと書きましたが、これはこれで良かったのかもしれません。部族語では文字もなく、医学や哲学など先進国の言葉を表現することができないからです。日本が先進諸国の文明をいち早く取り入れられたのは、諸外国の言葉を日本語に翻訳することができたからです。このため私を含めた多くの日本人が外国語を不得手としています。外国語の必要性を感じることが少ないからです。逆にイヌイット(エスキモー)の長老が、英語では雪の様々な状態を表現できないと嘆いたように(日本語ではみぞれ、ぼたん雪、粉雪などありますが、イヌイット語ではさらに多くの単語があるそうです)、部族語では自然に対しての微妙な言い回しがあるかもしれません。しかし、科学的な概念を翻訳するのは不可能です。今後もささやかですが、仏語圏アフリカの人々の発展をお手伝いしたいなと思っています。