佐野理事長ブログ カーブ

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第4回 忙酔敬語 逍遥の思想

常々、「経済成長が昨年よりも1%でしかなかった」という報道に「どうして成長しなければならないのだろう」と疑問を抱いていました。そんなある日、NHKの朝のニュースで五木寛之氏の「下山の思想」という新書が紹介されました。今、震災後の疲れた人々の間で「安らぎの書」として売れているというのです。五木寛之氏本人もボソボソとインタビューに答えていました。日本人は明治以来「坂の上の雲」のように頂上をめざして進んで来ました。しかし頂上に至った現在、氏の言うように「下山」ということも考えてみても良いのではないかと思い、さっそくジュンク堂で買い求めました。読後感想はちょっとガッカリでした。
内容がウスイのです。下山の先進国として、ギリシャ、イタリア、スペイン、ポルトガル、そして英国が紹介されていました。英国はともかく、「他の国はヤバクない?」と思いました。たしかに山頂をめざすのを止めるのはけっこうですが、下山するにもホドがあります。国家が破綻してしまえば、人々はもっともっと途方にくれてしまうでしょう。もう少しゆとりをもって、そんなに急に下をめざさず、ブラブラと散歩してみてはと考え、それを「逍遥の思想」と名付けてみました。
昔の哲学者の多くは散歩しながら考えるのが好きでした。京都には西田幾多郎の「哲学の道」があります。カントの散歩の時間は実に正確であったため、近所の人々は「カント先生が通った」と時計代わりにしたそうです。また、アリストテレスは散歩をしながら弟子と語りあったため、その一派は「逍遥学派」と呼ばれています。
私は3.5㎞の道のりを40分ほど歩いて通勤していますが、いろいろ考えながら歩いているので、それ程長い距離を歩いたという感じはしません。40歳台の頃は朝5時前に起きて5㎞ばかりジョギングをしていましたが、3㎞を走ったあたりからいわゆるランニング・ハイになりいろいろなアイデアが浮かんできました。学会の発表内容や論文も走っている間に頭の中でほぼ8割り方完成しました。しかし、50歳になってからは過度の運動はカラダに悪いと自覚し、ウォーキングだけにしています。何事も程々が肝心です。