院長ブログ カーブ

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第39回 忙酔敬語 自律神経失調症

自律神経は、内臓や心臓、血管系などを無意識のうちに調整する神経です。自律神経には交感神経と副交感神経の2つの系統があります。交感神経は「活動するための神経」、あるいは「緊張するための神経」です。ヒトでは日中に生活活動が活発になるので、「昼間の神経」とも呼ばれています。副交感神経は「リラックスの神経」と表現できます。体をリラックスさせて、力を蓄えて次の活動に備えるために働きます。副交感神経は夜間から夜明けにかけて活動が活発になるので、「夜間の神経」といえます。交感神経と副交感神経は単独で働くことはなく、お互いに調整し合って内臓と身体の活動を維持しています。副交感神経は「リラックスの神経」だから副交感神経が優位の方が良いと思われるかもしれませんが、副交感神経が暴走すると、血圧が急に低下したり、胃けいれんを起こしたり、喘息発作が出たりします。バランスが大事なのです。
自律神経失調症とは身体的な検査では説明のつかない症状(全身倦怠感、めまい、頭痛、動悸、胸苦しい、胸部や腹部の頭痛や異和感など)のことをいいます。しかし、最近は今まで自律神経失調症といわれてきた病気の原因がしだいにあきらかになってきて、この診断の「くずかご」のような病名を使うことは少なくなってきました。軽症うつ病、パニック障害、骨盤内うっ血症候群、月経前症候群など、このブログでも紹介してきた疾患が自律神経失調症に取って代わるようになりました。
実をいうと私は自律神経失調症という病名は嫌いです。風邪のウィルスによって自律神経が乱れることで熱が出たり鼻水が出たりします。食べ過ぎなどで腸の自律神経が乱れると腹痛を起こしたり下痢をしたりします。更年期になり女性ホルモンが不足することで自律神経が乱れると更年期障害になります。自律神経が関与しない病気はありません。女性が他科にかかり原因が不明だと、「ホルモンバランスが崩れているかもしれないので産婦人科に行きなさい」とすすめられることは多々あります。まだ30歳代で生理が順調な女性や、60歳をとうに超して閉経して10年という女性がホルモンバランスを崩していることはまずありません。しかし、そう思い込んでいる患者さんに対して「ホルモンの問題ではありません」と言って終わらせるのも気の毒です。また、他科の検査で異常がないというのは、こちらとしては安心材料となります。診療内科的なアプローチや東洋医学を駆使した治療ができるからです。
女性ホルモンにかかわらず、ホルモンと自律神経の関わりは重要です。甲状腺ホルモンは交感神経の作用を増強する作用があります。したがって甲状腺ホルモンが過剰になると動悸、ほてり、イライラといった症状がでます。逆に不足すると冷えや倦怠感など身体の活動が低下します。副腎髄質から褐色細胞腫という腫瘍が発生すると、アドレナリンとノルアドレナリンの分泌が過剰になるため交感神経が高ぶり、血圧が変動したり動悸がしたり、それこそ自律神経失調症となります。腫瘍が小さいと診断が困難です。私が医者になって4年目のとき、若い女性の治療を頼まれたことがありました。血圧が変動したり、動悸がしたり、不安や不眠を訴えていました。まだ、内科的知識もあったので褐色細胞腫も念頭に置いたのですが否定されました。そこでカウンセリング、自律訓練法、絶食療法など心身医学的な手法を全部駆使して治療にあたりましたがダメでした。そして腫瘍が大きくなった時点でやっと褐色細胞腫と分かりました。自律神経症状恐るべしでした。