院長ブログ カーブ

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第37回 忙酔敬語 生理不順

はじめにことわっておきますが「生理不順」は正確には医学用語ではありません。「月経不順」が正しい言い方です。ついでに「初潮」も医学用語では「初経」です。昔、後輩が母性衛生学会の学術講演会で発表したとき、初潮と言ったため、会場にいたベテランの助産師さんから「先生はお医者様でいらっしゃいますから初経と表現してください」と指摘され、赤っ恥をかいたことがありました。なぜこんな事をクドクドというと、このブログを医療関係者が見て「佐野は医学用語も知らないのか」と思われるのを危惧したからです。小心者ですね。「生理痛」も医学用語ではなく、「月経痛」や「月経困難」が医学用語です。しかし、だんだん実感がわかなくなります。ですから私は産婦人科医以外の演者が、学会で「生理痛」と言ってもとやかく言わないことにしています。
前置きが長くなりました。人間は大脳が発達したため、体の内部の変化を自覚することが不得手になりました。しかし、気候の変化は意識することはなくても微妙に身体に影響をおよぼします。環境の変化はや皮膚から大脳を通して、ストレスは脳からダイレクトにホルモン分泌の司令塔である視床下部に働きかけ、さらに卵巣ホルモンなどを調整する下垂体に作用します。この季節になると不正出血で受診する患者さんが、1日に5,6人もいます。春の時もそうですが、秋にも不正出血の患者さんが何人も受診します。今年で当院が開院してから17年目になりますが、同じ場所で長期間診療していると、気候の変化が月経におよぼす影響を間近に知ることができます。気候の変化する時は「そろそろ不正出血の患者さんが来る頃だな」と予想できるようになりました。夕方に「生理でもないのに出血した」と言って心配な顔をして受診する患者さんには、「○○さんみたいな患者さんは今日は7人目です。ずっとダラダラ出血していたわけではないので、癌の心配はまずありませんよ」と安心させてから診察しています。超音波やがん検診など基本的な診察をして「やっぱり問題はなさそうですよ」と説明します。不正出血は意識していない体の変化の現れです。男性ではこのような変化は自覚しようがないので、知らないうちに無理をしてしまいます。女性が男性より寿命が長いのは、このようにストレスが身体症状に表れやすいため、無理ができないというのが私の持論です。
精神的なストレスで生理が止まってしまうこともあります。昔の看護学校には寮があり、学生さんのほとんどが寮生活を強いられていました。親元から離れたため、抑うつ状態になり生理が止まってしまった学生さんもいました。現在は寮は廃れて学生さんは快適な生活を送っているようです。
東京で働いていた女性が、職場のストレスから生理不順となり婦人科のクリニックを受診したところ、ホルモンバランスが崩れていたため、女性医師に「あなた、この状態で結婚したら(赤ちゃんが出来ない体なので)結婚詐欺になるわよ」と言われ、ますます不安がつのり札幌に戻ってきました。当院でホルモンを検査してみたら確かに下垂体の働きが落ちていましたが、結婚詐欺になるほどではありませんでした。カウンセリングと漢方治療で心も体も回復し、現在はめでたく結婚して妊娠中です。
以上、環境とストレスが月経に与える影響について述べましたが、体質的な問題で生理不順になったり不妊症になったりすることも忘れてはなりません。今回は女性の心身症の一つとして、生理不順についてお話ししました。