院長ブログ カーブ

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第347回 忙酔敬語 グレープフルーツ

90代なかばのお婆ちゃんが出血のためご家族につれられて受診しました。
私は、高齢の方やいかにもメタボがありそうな患者さんには「お薬手帳を見せてください」と言っています。お婆ちゃんのお薬手帳には以下のシールが貼られていました。

[1]アスパラカリウム錠300mg1日2錠 ※ 電解質のバランスの調整薬
[2]センノシド錠12mg1日1錠 ※ 便秘薬
[3]アムロジピン錠2.5mg1日1錠 ※ 血圧の薬
[4]アルプラゾラム錠0.4mg1日1錠 ※ 抗不安薬
[5]ゾルビデム酒石酸塩錠10mg1日1錠 ※ 睡眠導入薬
[摂取に注意する飲食物]
・グレープフルーツジュース[3]
・アルコール類[4][5]

これを読んだ私がとっさに思ったこと。
「グレープフルーツだけにして、他の薬は全部やめたらいいのに!」
グレープフルーツやアルコールは薬の吸収を高め、薬の副作用が強く出る可能性があります。それで注意書きがあるのです。まあ、そんなことはめったにないのですがね。
このお婆ちゃんの場合はまだマシな方です。他の病院からもらっている薬を合わせたら10種類以上も処方されているお年寄りは珍しくありません。
こんな年になってなんでこんなに飲まなければならないんだろう、とため息が出ます。
睡眠導入薬はおそらく夜間に徘徊しないために処方されたのでしょう。それならグレープフルーツジュースに少量のウォッカなどを入れてグッスリ寝てもらったらどうでしょう。美味しいし喜んで飲んでくれると思います。
お年寄りには便秘はつきものですが、これも寝る前にグッとグレープフルーツジュースを飲むことで解消できそうです。
血圧だって今さら下げてもどうなるものでもないでしょう。血圧が高い状態が続くと動脈硬化になって脳卒中になる危険がありますが、これ以上動脈硬化血圧が進行するには時間がかかります。血圧が下がってフラフラして転倒する方がよっぽど心配です。
介護施設に行ったとき、食後に介護士さんが嫌がるお年寄りに一生懸命薬を飲ませる様子を見てため息が出ました。認知症のお年寄りは「イヤだ、イヤだ」と嫌がります。それに対して介護士さんは、「ちゃんと飲まないとダメですよ」と、鬼気迫る顔をして必死です。ここまでして、これから先なにか良いことがあるんでしょうか? 食後のささやかな時間をユッタリと楽しんだ方がお互いはるかに幸せなことでしょう。
はじめに紹介したお婆ちゃんの出血は、尿道カルンケルといって尿道のポリープからの出血でした。お年寄りにはよく見られ、症状がなければ様子をみます。ただし出血が多ければ本人もご家族も心配するので泌尿器科へ紹介しました。
たいていどこの泌尿器科の先生もよほどのことがなければ手術はしないので、これ以上薬が増えることはないでしょう。