院長ブログ カーブ

Close

第327回 忙酔敬語 不妊症とセックスレス

北国に住む者にとって春は格別です。3月も中旬を過ぎると道路の雪もほとんど溶けて重たい防寒靴をスニーカーに履きかえ、足取り軽くいくらでも歩いていたい気分になります。通勤の前半はJR学園都市線に沿った屯田防風林までの遊歩道。屯田に入ると一般道路となりますが、当直の先生の帰られる時間に合わせての6時くらいの早朝なので人影も車もまばらです。花を植えている家が多いのでキョロキョロと見渡しながら歩きます。4月のはじめには雪の下からはフキノトウが顔を出し、つづていてクロッカスの蕾が芽吹き、現在は、水仙、チューリップ、白蓮、ツツジ、レンギョウなどが真っ盛りです。
3月31日の土曜日は季節外れの暖かさでした。午前の外来診療を終えたあとブラブラとゆっくり歩いて帰りました。長年のカンでひょっとしてチョウチョが見られるのではないかと期待していたら期待にたがわず中型の茶色いチョウが一匹、日の光をあびてヒラヒラ飛んでいました。花も咲いていないのにマヌケだなあと思っていたら、あいにく翌日は最高気温が6度以下。生殖活動も何も出来ないではないか、ますますもってマヌケだったわけですが、彼らは別に深い考えで行動しているわけではなく、温度と光による反射によって活動しているので心配してもしようがないのです。
そう言えば、長年、アスファルトの割れ目にシブトク生えてくる雑草をアッパレと思っていましたが、最近の研究によると他に住める場所のない落ちこぼれみたいな草で、けして逞しいわけではないとのこと。人間以外の生物は、ただ生きていける場所に自然に発生して、なるがままに生きているのです。
昔、天使病院精神科の村田忠良先生が、ある講演会で、人間と他の生物の違いは宗教性にある、と述べられていました。村田先生は敬虔なクリスチャンです。当時(今もか?)、宗教性のまったくなかった私は、自然の中であるがままに生きている生物たちを思い浮かべ、自然を乱している人間が一番宗教性のない生き物ではないかと思ったことでしたが、何せ村田先生は小児科の南部春生先生とともに天使病院の二大看板、ただ拝聴するばかりでした。しかし、今になっても、ひとこと言ってみたかったと残念な気がしてなりません。
北海道にはスギがないのでスギ花粉症は少ないと思われているようですが、道南ではけっこうスギを見かけます。私が道立江差病院に赴任した昭和62年4月下旬、広場に大きなスギの木があって、そこに一陣の風がそよいだとき大木がゆらりと揺らぎ、木全体からもうもうと煙でも出たかと思われる勢いで花粉が飛び散りました。その頃の江差ではスギ花粉症の話題は少なく、てっきり別の木かと思いましたが、今、調べてみても道南はスギの産地で、間違いなくスギだったようです。中学生や高校生のとき、生物でプラキストン線といって、本州と北海道での生態系が津軽海峡を挟んで異なると習いました。しかし、道南は曖昧なところがあり、スギはもちろんマムシまでいます。
さらに昔、秋のことですが、江差に短期出張に行ったおり、マムシに指を咬まれたオッサンを当直の奥先生(外科医)と診たことがありました。とりあえずマムシ用の抗毒素血清を用意して私が注意書きを読み上げたところ、アナフィラキシーショックが高頻度で起こり死に至ることもマレではないと判明。かえってヤバイと判断した奥先生は局所麻酔をして咬まれた部位を鋭匙で手際よく掻き出しました。幸いにもその後のオッサンの経過は順調でした。マムシはほんの20センチ程度で、孵化したばかりのチビだったようです。