院長ブログ カーブ

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第316回 忙酔敬語 物忘れと不安障害 

最近、車を降りてキーをかける際、かならず2回は念を入れてかけることが多くなりました。3回もピッピッという音を確認しなければ気がすまないこともあります。
こうした行為は強迫性障害とよばれているそうです。
司馬遼太郎著『アームストロング砲』という短編小説には、女性に触れただけで何度も手を洗うため、正室に嫌われる鍋島閑叟が描かれています。
三木聡監督『イン・ザ・プール』には、外出したとたん、ガスの消し忘れで家が炎上してしまう状況を思い起こし、パニックになる女性が登場します。市川実和子さんがコミカルに好演していました。
ここまで来ると完全に病気ですが、私の場合はそれほど不安は強くないため、強迫性障害とはちょっと違うような気がします。
しかしながら子供の頃から不安障害の傾向はありました。
まずは赤面恐怖、あがり症、いわゆる社交性不安障害です。
授業中に教科書を音読するように指名されると、緊張のために顔がほてり、どうしようもありませんでした。
医学部に入ってからも、合コンで自己紹介が始まり、だんだんと自分の順番まで近づくにつれ、心臓がドキドキして困りました。
初めての学会での発表の日、ソワソワしていると、長期入院の患者さんに、
「先生、今日、何かあるの? いつもと違って変だよ」
と、勘づかれました。そうか、オレ、そんなに緊張しているのか、とますます不安になりました。
しかし、私には火事場の馬鹿力的なところがあり、緊張のために大きな失敗をしたことはありませんでした。記憶に残っている範囲ですが‥‥‥。
私の社交性不安障害を解消してくれたのは郷久先生です。
北見赤十字病院にいたとき日本心身医学会地方会に参加すべく札幌の会場に訪れました。郷久先生は私の顔を見るなり言いました。
「ちょうど良かった。ここにスライドが10枚あるから先生、発表してよ。そして最後に、橋本教授に我々の研究にご理解いただき感謝しております、と言ってね」
「発表原稿はありますか?」
「そんな物ないよ」
それまで学会発表はあがっても大丈夫なように、棒読み用の発表原稿を用意していました。それなのにぶっつけ本番です。それ以来、発表原稿なしで学会にのぞむことが出来るようになりました。
最近、精神科で強迫性障害と診断されている患者さんが受診されました。以前は確認行為に悩まされていたそうですが、今は鍵をかけてもそれで終了。私みたいに2度も3度も確認することはないとのことでした。
ここでハタと気づきました。自分の確認行為は単なる物忘れではないかということ。ようするにボーッとしているんですね。他のことはまめにメモをするように心がけていますが、キーは何度も確認するしかありません。気を落とさずに続けていくつもりです。