佐野理事長ブログ カーブ

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第308回 忙酔敬語 リケジョに学ぶ子育て

ご存じでしょうがリケジョとは「理系女子」の略語です。
最近、子育てに自信が持てないため、産後うつになるお母さんが増えています。赤ちゃんが泣いてもどうしてよいのか分からなく途方にくれ、「この子に申し訳ない、わたしって、母親失格だ、いっそ死んでしまった方がいいのではないか‥‥‥」と思い詰めてしまう人までいます。
どういう女性に多いのでしょうか? まず、融通のきかないマジメな女性。それから赤ちゃんを抱っこしたこと経験がないこと。
この赤ちゃんを抱っこしていないというのは非常にツライところです。いろいろあったけど、とりあえず無事に出産した。「おめでとうございます」と言いたいところですが、本人にとってはけっしておめでたくはない。見たこともない生き物が横でオギャアオギャアと泣いているのです。触っていいものかどうかも分からない、「さあ、抱っこしてごらん」と言われてもおっかなびっくり。
その点、20歳になるかならないかのヤンママは、まだ本能の息吹が残っているのか勘が良い。4日目の退院診察でも「赤ちゃんの言葉が分かるかい?」と訊くと、たいてい笑顔をうかべて「大体分かります」。頼もしいですね。
本能を失った30代後半の初産婦さんで、赤ちゃんを見たこともないというのは実に気の毒です。赤ちゃんと家で二人きりになるのが恐ろしいと言います。
そんなお母さんには、これからゆっくりと一緒に赤ちゃんのことを勉強していこうね、かならず赤ちゃんの言葉は分かるようになるからと励まします。
昔、一世を風靡した吉村医院がありました。今でも愛知県にありますが、前院長の吉村正先生は、自らクレイジードクターと称する自然分娩一徹の人でした。薪割りなど江戸時代の生活を理想として、少しくらいお腹が張っても歩け歩けと言って遠足を強行していました。ただし、近辺の妊婦さんは吉村医院には近づかず、遠方からの信奉者が集まりました。これは私の個人的な誹謗中傷でありません。以前、札幌に講演に来られた吉村先生自身の言葉です。いろいろ言われていますが正直な方だと思います。その講演のなかで、世界的に活躍していたリケジョが吉村医院で自然分娩をして、とにかく子育ては今までの仕事以上に楽しいと言っていると、自慢げに紹介していました。
当院も安全第一をモットーとしながら自然にそったお産をしています。そのなかには吉村医院のようなリケジョの初産婦さんが何人かいます。みな30代後半で、なかには40代に突入した方もいて女性ということで仕事でいろいろ苦労されていました。
リケジョ達は頭でっかちな人が多いので(頭のサイズではなく思考回路のことです)、子育てに苦労するかと思いきや、共通して、赤ちゃんを観察するのは新しい発見の連続で楽しい、と吉村医院同様に喜びに満ちた産後を送っていました。学問が身につくとはこうゆうことなんだ、と大いに感心したものです。
中途半端な育児書や忠告に揺らぐことのない自らの観察を大切にする精神は、結局、ヤンママ達と同じ方向に突き進んでいました。
科学と人間の情緒は相反すると思われがちですが、人間の感情もAIで読み取れる時代です。しっかりした観察力を身につけてリケジョとして子育てを楽しみましょう。