院長ブログ カーブ

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第297回 忙酔敬語 佐々木大輔さん、大人の冒険をする

1月3日の当直のとき、HNK BS1で山岳スキーヤーの佐々木大輔さんがアラスカの最高峰、デナリの大滑降の下準備をする番組を観て以来、ずっと本番の番組を楽しみにしていました。詳細は1月30日のブログに書いています。
荒れ狂うデナリを滑り降りるチャンスは6月しかないそうで、6月以降、佐々木さんがどうなったか気になってしようがありませんでした。報道でも佐々木さんのことは報じられないし、ネットで検索しても下準備の話しか出てきませんでした。失敗したのかもしれないけど、少なくとも死んではいないようでした。
待ちに待ったすえ、9月3日、とうとうNHKスペシャル「世界初 極北の冒険 デナリ大滑降」が放映されました。BS1から総合への昇格です。それだけでも何とかなったんだと分かりました。
佐々木さんは、かつて、標高1721mの利尻富士を2日間かけて登頂して、雪崩と競争するようにたった3分で滑り降りたことがあります。
今回もダイナミックな滑降を期待したのですが、3時間かけての慎重な滑りでした。正直言って拍子抜けしましたが、後からジワリジワリと、これが大人の冒険だ、とあらためて感心しました。
大体、北米最高峰のデナリは登頂するだけでも大変なことで、マッキンリーと言われた頃、国民栄誉賞の植村直己さんがここで消息を絶っています。植村さんは一匹狼で世界の最高峰をすべて単独で登頂しました。
植村さんは「冒険とは生きて帰って来ることだ」と言っていたそうです。植村さんの崇拝者である佐々木さんは「生きて帰ってくる」ことに重点をおきました。きれいな奥さんと3人の幼い子供達が待っています。
奥さんは末の赤ちゃんを抱きながら「危ないことをするんじゃないよね。無事に帰ってくれれば、話を聞かせてくれればいいよね」と言いますが、理解があるというより、かえって痛々しい。絶対に死ぬわけにはいきません。大勢のスタッフを連れて行きました。
デナリの斜度は55度もあります。滑り出しは細かくターンをくり返します。アイスバーンというよりまさに氷の部分はジワジワと横滑り。さらにいざというときのために伴走者もつけました。
この相棒が転倒して負傷したため一時滑降を断念しました。その際、迷わずに相棒の救助に向かった姿を見て、良いヤツだ、と思いました。相棒も「すまん」と一言、言っただけ。悪びれた様子はありませんでした。私にとってこの番組のハイライトでした。
これで一気に滑降するということになりませんでしたが、神様のご褒美か、不安定なデナリの天候は翌朝にはすっかり回復したため、ふたたび冒険は続行されました。
その他、ルートを間違って、断崖絶壁の崖っぷちまで滑り込む場面もありました。そこはさすがの経験。数メートル先でピタッと止まりました。ヘリコプターでその様子を撮影したシーンは高所恐怖症の私にとって、それは恐ろしいものでした。
キャンプ地点まで滑り降りた佐々木さんは笑いながら「2回、死にました」と言っていました。
用意周到な冒険、我が産婦人科医療にも大いに参考になりました。