院長ブログ カーブ

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第276回 忙酔敬語 屯田防風林

屯田防風林は新琴似と屯田の境にまっすぐに伸びている細長い林です。
ポプラ、ナナカマド、白樺など落葉樹が主の雑木林です。ほとんどが落葉樹なので四季の変化のメリハリがあり、歩いて通勤する私にとって防風林を横切る瞬間は楽しみです。
四十代の頃は早朝のジョギングが趣味でした。平日は安春川に沿ったコース5㎞を走っていましたが、休日は安春川の水源を出発してJR学園都市線に沿って北上し、防風林のほぼ東の端っこまでたどり着き、そこから防風林に沿って防風林の西の端っこまで走り、迂回した安春川にぶち当たり、そこから安春川に沿って水源までもどるという9㎞のコースを走っていました。約、50分。5月の頃は防風林で子育て中のカラスに襲われましたが、安春川にたどり着くと川沿いに咲いているツツジなどの花がそれは美しく至福の思いがしました。ジョギングを楽しむ人にとってはおすすめのコースです。ただし早朝に限ります。6時を過ぎると車が往来して排気ガスをタップリ吸うハメとなり、不愉快きわまりなくなります。
ところが五十代にさしかかったある日、当時五輪橋病院の丸山先生に、「佐野、お前の顔には死相が現れているぞ。余裕を残しておかないと危ないぞ」と注意されました。
大先輩の忠告にしたがって片道3.5㎞の通勤でガマンしたところ、はたして診療中に疲れは感じなくなり、毎年、参加している学会で顔なじみの先生に「先生、今年は顔色が良いですね」と言われました。危ないところでした。ジョギングの毒にはまっていました。ジョギングは健康法の中でも劇薬と言われています。
といううワケで、この十年以上の防風林のおつきあいはただ横断する一瞬のみです。でもこの一瞬でも四季の変化はシミジミと感じ取ることができます。
まだ雪深い2月には、アカゲラのカツカツカツカツといった木を突く音が聞こえます。しかし、この2,3年は聞いていません。何かあったのか心配です。早朝に走っていた頃は、実際にけっこう低い位置で木を突いている姿を見たものです。
そう言えば、初夏の日中にはウグイスのホーホケキョも聞こえましたが、最近は聞いていません。
現時点では、元気なのはカラスばかりですが、時間帯も関係しているのかもしれません。でもヒワのたぐいでしょうか? ときどき名も知らない鳥が忽然と群れをなして現れることがあります。
たった幅数十メートルの林なのにこれほど多くの鳥が集まります。餌となる植物の実や昆虫が豊富なのでしょう。これから夏にかけてエゾハルゼミのギギギギギギという鳴き声が聞こえるはずです。
樹木というのは偉大な存在で、多くの生物を引き寄せます。当院を建てるにあたって自生していたライラックの木を間引きしました。また、駐車場を拡張する際、裏に生えていた数本の木を切り倒しました。何だか、スマナイ、と思いました。
ここで思い出したのが昭和天皇も愛した世界的な博物学の大家、南方熊楠です。明治政府の神社合祀政策によって鎮守の森が伐採されるのに危機感を抱いて反対運動を起こしました。当時、生態系(エコロジー)という言葉がなかったため、嘆願書には「エコロギー」とカタカナで書かれていました。それが私には痛々しく感じられたことでした。