院長ブログ カーブ

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第274回 忙酔敬語  ジャクソンとクロムウェル

トランプ氏がアメリカ合衆国大統領に就任したとき、歴代の大統領のなかでも一番の乱暴者ジャクソンが引き合いに出されました。
ジャクソンは19世紀初頭の大統領で、私が高校生のとき歴史の教科書にはアメリカに民主主義を根付かせた大統領として掲載されていました。もっとも選挙権は白人男性に限られていましたが、それでも普通選挙を始めたのでジャクソニアン・デモクラシーとして評価されていました。そのため私はてっきり歴代でもトップレベルの大統領と思い込んでいましたが、よく調べるとかなりの問題児ということが分かりました。
とくに酷いのがインディアンの虐殺。大統領に就任する前ではありましたが、男女子供みさかいなく徹底的に虐殺しました。まさに阿鼻叫喚、このブログに紹介するのもためらうほどでした。
インディアンに対する虐殺を克明に描いた作品として映画『ソルジャー・ブルー』があります。女子供まで根絶やしにするシーンを見て、人間、ここまで残酷になれるものか、と胸が悪くなりました。ただし、時代はジャクソンよりもずっと後の1864年、誰もが歴代ランキング・トップクラスと認めるリンカーンの時代でした。
リンカーン自身は奴隷解放宣言を行い、ジャクソンみたいにインディアンの虐殺には関与していません。しかし、広大なアメリカでは彼のヒューマニズムはすみずみまで行き渡りませんでした。
インディアンの生活をみずみずしく描いた映画『ダンス・ウィズ・ウルブズ』。ケビン・コスナー監督・主演・制作です。まさに名画ですが1箇所残念なシーンがありました。インディアンが集団でバッファロー狩りをする場面。デブの色白い若者が混じっていました。80年も昔の西部劇の名作『駅馬車』で、激走する駅馬車がアパッチ族の襲撃を受ける場面がありましたが、インディアン達はすべて引き締まって剽悍でした。いくら昔を回顧しても本当のインディアンはほとんど滅亡したのだと思ったことでした。
ここで思い出したのがイギリスのクロムウェル。
歴史の教科書では18世紀中頃の清教徒革命の立役者と紹介されていました。スチュワート王朝チャールズ1世の首をちょん切りましたが、イギリス民主主義のはしりを象徴する人物として記憶していました。
ところがある日、アイルランドの歴史を調べてみたら、クロムウェルによってアイルランド人が大虐殺されて、人口が半分近くまで減少したと書かれていました。ヒトラーに匹敵する恐ろしい人物と判明しました。
ここでまた映画の紹介。1970年制作『クロムウェル』です。クロムウェル役はリチャード・ハリス。そしてチャールズ1世は扮装の名人アレック・ギネス。予告編でアレック・ギネスを見たとき、まさにチャールズ1世が肖像画から抜け出てきたようで心底しびれました。いつか見ようと思っているうちに40年以上もたってしまいました。
いったい、お前は何が言いたいのか? 映画の解説か? スイマセン、だいぶ横道にそれました。最後を数行でまとめます。
歴史を習って半世紀にもなりますが事実の半面しか教わっていませんでした。教科書なんか鵜呑みにしないで色々な角度から勉強しなければ危ないなと感じ入ったのでした。