院長ブログ カーブ

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第27回 忙酔敬語 ダイエット

「どうすれば体重が減るんでしょうか」と訊く患者さんに私が決まって答えるのは、「食べないことです」。「でも私、そんなに食べていませんよ」とよく言われます。むかし、オーストラリアの学会に行った時、長時間のフライトで下を見ると延々と続く赤茶けた砂漠に強い印象を受けました。日本でのフライトでは緑の森林ばかりです。広大なオーストラリアですが、人口が意外に少ない理由が納得できました。このような経験をお話しした上で「オーストラリアのど真ん中に1週間もいれば必ず痩せますよ」と冗談交じりにいうと、さすがに患者さんも納得してくれます。
私は肥満児でした。球技は得意ではなく、長く走るのも息が切れてダメでした。そんな私がダイエットにはまったのは、きっかけは忘れましたが医学部の4年目の時でした。生化学の教科書に記載されていた食物に含まれるカロリーとタンパク質の量を参考にして、1日1300カロリー、タンパク質は80g摂るようにしました。当時、柔道部に所属していたので筋肉量は減らさないように心掛けました。ヒマだったので食物は全て重さを量ってから自分で調理しました。これで1ヵ月間で84㎏あった体重が74㎏になりました。腕の筋肉や大胸筋が分かるようになり自分でもウットリとするような体形になりました。その後リバウンドもありましたが、この経験を生かし、これまで3回ぐらい荒療治をしました。現在の体重は75㎏ですが、年のせいで筋肉量も減り体の締まりが悪くなったので72㎏まで減らしたいと思っています。その気になればいつでも出来るのは分かっていますが、なかなかその気になれないのが残念です。それでもこの数年はこの体重を維持しています。そのコツは1日2食にしていることです。
「1日3食摂らないといけませんよ」というのは迷信だと私は考えています。お相撲さんは1日2食というのはよく知られていますから、1日3食摂らないと太ると思われるかもしれませんが、お相撲さんの2食の量は半端ではありません。普段の量で2食にすれば体重が減るのは当たり前です。今年100歳になった聖路加病院の日野原重明先生は、現在もふつうの人よりも多忙な生活を送っていますが、朝食と昼食は、2食合わせても牛乳1杯、ジュース1杯、バナナ1本程度です。夕食だけはふつうの食事をしているので時々分厚いステーキも食べているようです。意志の強固な先生ですから1日1300カロリーを苦にもせずに守られています。そして毎日体重を測って自己管理をしておられます。
コマーシャルで宣伝されている痩せ薬は、防風通聖散や防已黄耆湯という漢方薬です。メーカーによって適応名が異なることもありますが、大柴胡湯も肥満が対象になります。しかしこれらの漢方薬はもともと太っている人がなりやすい病気のために作られた処方で、体重を落とすのを目的とはしていません。しかし、防風通聖散や大柴胡湯には便秘に効く大黄が含まれていますので、便の分だけは体重が落とせるかもしれません。また、防已黄耆湯はむくみを取る作用があるので体の水分が抜けただけ体重が減る可能性があります。しかし根本的に脂肪を落とす作用はほとんどありません。サノレックスという食慾抑制薬がありますが、処方は3か月が限度で、不安、抑うつの人には禁忌とされていますので、現実的には無意味です。何かを口に入れて痩せようとするのは危険です。とにかくモチベーションをしっかり持って頑張るしかありません。しかし、始めに述べたような私の極端な方法は、摂食障害につながることもあるので、ほどほどにしてください。