院長ブログ カーブ

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第262回 忙酔敬語 佐々木大輔さんの冒険

1月3日は日当直でした。正月最後の日。お産もなく、病棟は落ち着いていたのでぼんやりテレビを見て過ごしました。その中で度肝をぬいたのがNHK BS1 で放映された番組。山岳スキーヤーの佐々木大輔さんがアラスカ山脈の最高峰、デナリの大滑降をもくろむ姿のドキュメンタリーでした。
デナリとはマッキンリーと言われていた北米最高峰の山で、植村直己さんが消息を絶ったところとして知られています。佐々木さんは少年の頃から植村さんにあこがれて現在への道に進んだとのこと。
はっきり言って、バカなヤツもいたもんだと思いました。私は冬山で遭難したという報道があるたびに、何で好きこのんで危険なことをするんだろうと呆れています。今回はただの山登りではなく頂上からの大滑降ですよ。植村さんでさえアウトだったのに何を考えているんだろう。
私は山は嫌いではありませんが、危険をおかしてまで登ろうとする人の気持ちが理解できません。NHK BSプレミアムで毎週月曜日に『日本百名山』という番組があります。これは好きです。ベテランのガイドさんがその土地その土地の個性あふれる山を案内するという内容です。臨場感あふれるカメラワークなので寝っ転がって見ているだけで、充分、登山した気分になれます。「今回は初心者向けです」と紹介しているのに、一歩間違ったら谷底に転落なんて場面もあり、それを真に受けてチャレンジしたら大変なことになるぞ、と突っ込みたくなることもありました。とにかく見るだけでけっこうです。
さて、今回の番組は1年後(すなわち今年)の大滑降のための綿密な調査でした。デナリは険しい山で、斜度は50度だなんてまさに絶壁ですね。そこを頂上から滑り降りるのです。コースには広大な氷河もあり、所々に恐ろしいクレバスが口を開けています。8年前、佐々木さんはヨーロッパのアルプスの滑降でクレバスに落ちて顔面の骨を折るという大けがをしました。まだ懲りないんですね。
ここで、そう言えば何年か前に利尻富士の滑降をしたバカがいたなと思い出しました。番組を見ているうちにやはり佐々木さんということが判明しました。
私は大学病院にいたおり、利尻町へ月刊出張していたことがありました。利尻島は、島と言うよりも海からヌッと突き出した山そのもので均整が取れていて、遠くから見るとまさに海上の富士山です。標高は1721m。斜面は急なんてものではなく、山そのものが尖っています。いずれ、ここをスキーで滑り降りる奴が現れるかも知れないなと思いました。三浦雄一郎さんが富士山の大滑降をしたように。
佐々木さんは厳冬の利尻富士をチームを組んで2日かけて登頂しました。猛吹雪のときはテントの中で一休み。慎重に登頂しました。それからが凄かった。雪崩と競争するようにたった3分で滑り降りました。かつて雪崩に巻き込まれたこともあるので、時々、後ろを振り返りながら雪崩のコースを読みながらの滑降でした。
さすがにここまで来ると感服しました。今年のデナリの挑戦が楽しみです。年齢は40歳。体力と経験がちょうどマッチしています。少しでも間違ったら「死」が待っていますが、プロ・スノーボーダーの奥さんはこの無謀な計画に理解があり、二人の幼い娘さんと産まれたばかりの赤ちゃんとともに応援していました。私も応援するしかありません。