院長ブログ カーブ

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第25回 忙酔敬語 更年期の効用

「私、もう更年期なんでしょうか?」。43歳のくたびれきった患者さんが訊きました。生理はまだ順調です。更年期とは閉経の5年前から閉経の5年後までの計10年間とされています。この女性の場合、あと5年以内で生理が止まるなら更年期で、5年以上も生理が順調に来るようならまだ更年期ではないといえます。ですからこのような質問を受けると「さあ、どうなんでしょうねえ」と答えるしかありません。
女性は更年期障害があるので男性と比べて不公平だと思われがちですが、私は、逆に更年期障害という病名が認知されているおかげで女性は男性よりも長生きをしているのだと考えています。
うつ病や心身症は女性の方が男性の数倍も多いとされていますが本当にそうでしょうか。近年、日本人の自殺者が年間3万人を超えています。自殺の原因はいろいろあるでしょうが、自殺する直前の人たちの精神状態はほとんど「うつ」と考えてよいと思います。そして2万人が男性で女性は1万人です。これで女性の方がうつ病になりやすいといえるでしょうか。精神科の先生に伺ったところ「たしかに男性のうつ病患者さんは重症になってから受診しますね」と話してくれました。更年期障害ということで受診する女性の2割くらいは軽症うつ症です。この段階ですと治療はそれほど難しくはありません。
「犯罪の陰には女あり」という言葉があります。これをまともに受け止めると女性の方がワルだとされてしまいますが、実際に犯罪を起こすのは男性であるともいえます。せつな的に犯罪を起こす男性の心はストレスのためかなりすさんでいます。女性がストレスを受けると生理が乱れたりお腹が痛くなったり更年期障害と思われるような自覚症状、すなわち心身症になりますが、男性ではそういった身体症状は出ないために犯罪に走るのでないかと私は考えています。
4年ほど前に、埼玉の大学病院で腫瘍精神医学を専門に診療をしている先生が札幌に来て講演されました。講演の内容は、配偶者とガンなどで死別した後に心身の健康を損ねた患者さんに対してどう向き合うかというものでした。一般に配偶者と死別した場合、男性の方が女性よりも死亡率が高いといわれています。それなのに悲嘆ケアのためにカウンセリングによる治療を希望して精神科を受診する患者さんは女性がほとんどで、男性はあまりいないということでした。講師の先生は「どうしてなんでしょうね」と問題を提起して講演を終えました。会場は静まりかえって誰も答える人はいませんでした。帰りに郷久先生と一緒にタクシーに乗ったとき、ふと気がつきました。「先生、僕ならカミさんが死んでも病院には行きませんね。多分、飲み屋に通うことになりそうです。男ってそんな者だと思いませんか」と言うと、お酒はそれほどたしなまない郷久先生も「そうだね。そうかもしれないね」と賛成してくれました。女性には更年期障害というお墨付きががあるため、体調を崩したときに病院を受診するハードルが低いのでないでしょうか。それに更年期を過ぎても家庭の仕事など女性のやることはたくさんあります。男性は趣味などの生きがいがなければ配偶者に死に別れても呆然とするだけで、体調を崩してもどうして良いのか分からないケースが多いのではないかと思います。
更年期って女性の健康にとってそんなに悪いものではありませんよ。