佐野理事長ブログ カーブ

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第248回 忙酔敬語 日本の里山を世界遺産に

BSプレミアムで朝7時から『ニッポンの里山』という番組が10分間放送されています。当直明けのときは気分が良くなるので必ず見ています。
「里山」とは人の営みと自然の生態系が渾然と混じり合った、大げさに言えば桃源郷のような場所です。山とは限らず、田畑やそこに棲む動植物、清流やその水を利用する人々と魚や川底に棲む虫、人と自然が良い関係で共存しているところです。
かっては日本のいたるところが「里山」でした。しかし、近代化にともない河川は汚染され、メダカさえ絶滅危惧虚となってしまいました。
日本は、北は北海道から南は沖縄まで、富士山や北アルプスなどの高い山地以外は人が暮らすことができます。地球儀を見るとこんな国は世界でも珍しいことが分かります。中央アジアや北アフリカ、そしてオーストラリア大陸のほとんどが茶色い砂漠です。
中国やギリシャも古代は緑に満ちあふれていましたが、高度の文明のため森林が伐採され土地は乾き荒れ果ててしまいました。さいわいにも日本は人が住めない山地が6割以上を占めるため多くの森林が残りました。ただし人がきちんと管理しないと荒れ果てます。昔は炭を作ったりしてこまめに森林を管理していたため松茸も豊富に採れました。住みやすい自然を確保するには意外にも放ったらかしではダメです。人と自然の適度な関係が必要なのです。
さて当院の近辺の屯田地区。札幌の郊外で住宅が建ち並んで空き地が少なくなってきましたが、その空き地を見ると(当院の駐車場ですが)、最近珍しくなったツユクサが可憐な青い花を咲かせ、今年は、例年よりも多くのモンキチョウが飛び交っていました。ただし、アゲハチョウは見かけませんでした。ただ、私とチョウチョの時間帯が合わないだけかもしれませんが‥‥‥。毎年、生態系が少しずつ変動しているのが分かります。
5,6年前にはスズメが激減して、どうしたんだろうと心配しましたが、数年前からまた増えだして、スズメツリーを形成するまでになりました。スズメの間で伝染病が流行ったという説もありましたが、ほとんどの人が無関心なのが私にとって不満でした。
自然は大切だと、多くの人は言いますが、こんな身の回りにも自然はひそんでいます。北海道は冷涼なので、植物の勢いは本州と較べて冴えません。千歳空港を降りたって札幌へ向かうと荒野が続きます。本州や九州だと、緑いっぱいの田畑が続き、やっぱり人が住みやすい土地なんだな、とちょっと羨ましく思います。
最近、ポケモンgoなるゲームが世界中で流行していますが、スマホの画面を覗かなくても地面を見れば小さな花や虫がいたるところで見えます。それをじっと観察すれば人工の産物よりもはるかに面白いと思うのですがね。まあ、好みですからしかたありませんけど‥‥‥。
富士山が世界遺産になったと騒がれましたが、日本は津々浦々に素晴らしい自然が生活と混在して「里山」となっています。いっそのこの「里山」を世界遺産として登録してはどうでしょうか? 日本人は権威に弱いので世界遺産ともなればこれ以上「里山」をむしばむような行為はしなくなるでしょう。
メーテル・リンクの『青い鳥』。探し求めた幸福の象徴の青い鳥は結局は家にいたというお話です。同様に日本には豊かな自然は「里山」としていくらでも存在するのです。