佐野理事長ブログ カーブ

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第243回 忙酔敬語 王国とはなんぞや

HNKスペシャルで『ディープオーシャン 光る生物たちの王国』という番組を見ました。新聞の番組表ではダイオウイカのことが書いてあったので楽しみにしていたら、ダイオウイカは深海の生物の代表としてつかみの部分に登場しただけ。あとはひたすら深海の光る生物たちの観測と解説だけでした。まあ、それなりにタメにはなったけど‥‥‥。
ここで気になったのが、「王国」という言葉。ふつう、「王国」と言えば「王」が支配する国のことをいいます。光る生物たちの誰が「王」なんですかねえ。「王」に相当するような生物は最後まで登場しませんでした。ダイオウイカなら「王」でもいいかもしれませんが、先ほども言ったように登場したのは始めだけでした。
では「共和国」ならどうでしょう。何だかますます変です。生物たちがお互いにワイワイと話し合いをするわけではないし、人類以外には縁のなさそうな言葉です。
「帝国」は他の国を侵略併呑して領地を拡大した国家というイメージがします。ローマ帝国、イスラム帝国、モンゴル帝国、オスマン帝国、ロシア帝国、中国の秦以降の各王朝など。日本も戦前は台湾や朝鮮などを支配して生意気にも大日本帝国と称していました。
ここで念のために広辞苑(第五版)を開いてみました(以前、医局で広辞苑で調べ物をしていたら、たまたま通りかかった小児科の木村先生に「まだそんな物を使っている先生がいるんですね」と笑われました)。
ていこく【帝国】皇帝の統治する国家。
こうてい【皇帝】帝国の君主の尊称。
笑っちゃいますね。だから辞書調べはやめられない。一回り小さい角川国語辞典では、 ていこく【帝国】皇帝の統治する国家。
こうてい【皇帝】帝国の君主。
と、ほとんど同じです。どちらかがどちらかのマネをした可能性があります。あるいは両方とも違う辞書からのパクリかもしれません。大体、教科書などは、最新版でも以前の教科書を土台にしているので、そうそう変わるものではありません。
さすがにGoogleはここまで間抜けではなく、いろいろと解説していました。ついでに言うと現在の世界で皇帝に相当するような称号を称しているのは我が国の天皇だけだそうです。戦前と違って日本は帝国ではありません。また皇帝と天皇ではそもそも言葉のなり立ちからして違います。きりがないので皇帝の話題はここまでとします。
さて、本題の「王国」。広辞苑では
おうこく【王国】①王を主権とする国家。②一つの大きな勢力。「野球―」
ついでに角川国語辞典。
おうこく【王国】王を主権者とするくに。「オランダ―」
今回の「王国」は広辞苑の②に相当しますね。まさにピッタリ。文句のつけようがなく拍子抜けしました。それに対して角川は「王を主権者とするくに」のみで、オランダ王国を例にあげていますが、オランダは立憲君主制で主権は国民にあります。
いつもながら愚にもつかないことを書いてしまいましたが、実はこのブログを書いたのは8月29日です。9月は忙しいので書きだめをしました。当院近辺ではすでに秋の気配で赤とんぼが飛び交っていました。まさに「赤とんぼの王国」でした。