院長ブログ カーブ

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第242回 忙酔敬語 つまらない戦争

反戦ジャーナリストの、むのたけじさんが亡くなった。101歳でした。報道番組では生前の姿が放映されていました。
「戦争とは、人類のやる罪悪行為の中で、最も許されない、最もつまらない、しかも最も残酷な犯罪」という振り絞るような声を出して訴えていました。
私はとくに「最もつまらない」という言葉が気になりました。
我々は戦争反対と言いながら、戦争をおもしろがってはいないか? たとえば『スター・ウォーズ』をおもしろがってはいないか?
「だって、あれって映画でしょ? 本当の戦争と一緒にしないで! バカみたい」と、一笑に付せられるかも知れませんが、私は気になります。とくに「エピソード4」と最新作の「フォースの覚醒」。これらの映画で惑星が最終兵器デス・スターで一瞬に消えてしまう場面がありますが、非常に後味が悪い。戦争の何が悪いのかと言えば多くの人が殺されることです。惑星が消えるというのは原爆どころの騒ぎではありません。あまりにもあっさりとかたづけられています。私以外に誰も何も言わないのが怖い。気づいている人がいればお友達になれそうです。
最近の映画で戦争の怖さを体験できたのが、クリント・イーストウッド監督の『父親たちの星条旗』。姉妹編の『硫黄島からの手紙』は日本側の立場の映画で、こっちの方が多くの人が観たことでしょうし、私もテレビで何回も観ました(2本とも映画館では観ていません)。『父親たちの星条旗』もテレビで観たのですが、途中でイヤになって寝てしまいました。救いがなさそうでイヤになったのです。映画自体は名作です。クリント・イーストウッドは大した監督です。
どちらの映画にも米軍の戦闘機としてF4Uコルセアが現れます。逆ガル翼の一度見たら忘れられないという独特の姿をした戦闘機です。私が小学生の頃、少年マガジンか少年サンデーに特集として第二次大戦に活躍した戦闘機についての解説が連載されていました。まだ戦争の記憶のある時代なのに(だからこそなのか?)興味津々に書かれていました。その懐かしい姿が画面に現れたとき、こんな状況で活躍してたんだな、と気分が高まりました。一緒に観ている人がいれば、「ほら、この戦闘機、コルセアといってエンジンとプロペラがでかいからこんな変な翼をしているんだぞ!」と自慢するところでした。このあたりまでは戦争映画を楽しんでいました。
その後が悲惨でした。『硫黄島からの手紙』での日本軍ははなっから玉砕覚悟でしたが、『父親たちの星条旗』の米軍の兵士たちは皆生きて帰るつもりで屈託なくふざけあっています。それが上陸とともに艦砲射撃をまぬがれた日本軍のトーチカから機関銃の一斉射撃を受け、肉体が飛び散り、地獄と化して行きます。もともと死ぬ気はないのでその恐怖たるやまさに想定外です。太平洋戦争では圧倒的な戦力を持つ米軍が余裕を持って日本を制したと思いがちですが、参戦した当事者にとってはトラウマの残る戦いでした。
むのたけじさんら、戦争を語り継ぐ人々が高齢のために亡くなり、戦争の恐ろしさを知らない世代が増えていると危惧されていますが、平和が続けば伝える人がいなくなるのは当然です。しかし、海外では相変わらずバカバカしいほど戦争が続いています。そこをしっかりと見つめることで戦争のつまらなさは理解できるはずです。