佐野理事長ブログ カーブ

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第235回 忙酔敬語 育児支援

先月、札幌市妊娠・出産包括事業推進連絡会という舌を噛みそうな名称の会議に出席しました。少子化対策の一環として、子育てに困っているお母さんを援助するのが目的です。 昨年から札幌市では妊娠5ヵ月当たりの初妊婦さんを対象に保健師さんが自宅訪問して、いろいろ相談に乗るという事業を開始しました。これによって妊娠や子育てに関するお母さんたちの不安を少しでも解消するというねらいです。まだ1年もたっていないのでその成果は出ていませんが、「必要ない」と門前払いを受けるケースも少なからずあるようでした。私としては、門前払いのお母さんの方がよっぽど心配だなあ、と思い、門前払いするほど注意を要すると提案しました。
当院の近辺は札幌市や日本の一般的な状況とちょっと異なり、5,6人のお子さんを産むお母さんもザラにいます。こうなると子育ても大変になります。こうした多産のお母さんに対しても気を配る必要があります。
また、最近の報道で知ったのですが、東京23区ではこの10年間の統計によると、妊娠初期に自殺する妊婦さんの存在があきらかとなり、その症例数はお産の事故で亡くなる妊産婦さんを上回るそうです。悪阻(つわり)の時期には15%の妊婦さんが「うつ」になると言われています。それも自殺の一要因かも知れません。ですから今後は妊娠5ヵ月と言わず、母子手帳を発行した時点から注意する必要があります。
でも、事業はまだ始まったばかり。始めからとやかく言ってもどうしようもないので、とりあえず実行して問題が生じればそのつど変更するということにしました。
人間はやっかいな動物で、自分が産んだ子をどうあつかって良いのか分からないケースが多々あります。赤ちゃんが泣き出すと自分も途方にくれて一緒に泣いちゃうのです。わりと高齢の妊婦さんによく見られます。二十歳前後のヤンママだと本能のなごりのせいか、、退院時に「赤ちゃんがどうして泣くのか分かるかい?」と訊くと、ニコニコして「ハイ、だいたい分かります」と来ます。だいたいでもチョッピリでも頼もしいかぎりです。でも、お母さん自身、まだ遊びたいざかり。十代で、本当に大丈夫なんだろうか?と不安を覚える超ヤンママに関しては、しばしば保健センターへ訪問看護の依頼状を書きます。
この依頼状、産後ばかりでなく、当院では妊娠中にもよく書きます。保健所の課長さんによると妊娠中に依頼状を書く施設は札幌市内では当院だけとのこと。出席した方たちから、ホーッ、と感嘆の声が上がりましたが、見ちゃいられないケースが多いためかも知れません。せっかく札幌市がやる気を起こしているのですから、こっちも利用しなければお母さんや赤ちゃんが可哀想です。
産後の問題と言えばマタニティーブルース。以上のように早い段階で手をうって置けば大きな問題にはなりません。しかし、疲れたお母さんには育児支援が必要になることがあります。オチビさんを一時お預かりするか、お母さんとともにお預かりするという手段があります。しかし、保育所でお預かりできるオチビさんの月齢は5ヵ月以上です。
そこで札幌市では空白の月齢4ヵ月以下の赤ちゃんに対する事業を計画しています。具体的には市内の6ヵ所の助産所に一時的に泊まって頂く。必要経費は母児一組で3万円くらいかかりますが、場合によっては市も助成するそうです。実施は今年の9月からになるようです。そろそろ市から案内が来ますのでお見逃しのないように願います。