院長ブログ カーブ

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第233回 忙酔敬語 カラダに良い食事

先日、八十過ぎの患者さんが「健康になるには何を食べたら良いんでしょう?」と訊ねられたので、例のごとく「あと何年生きたいのですか? 無理しないで好きな物を召し上がって人生を楽しんだらいかがですか」とはぐらかしたら、「この前、ひ孫が生まれたので、その子が大人になるのを見とどけたいです」とニコニコと答えられました。
これにはまいったな。カラダに良い食事について、もっと真面目に考えてみます。
人間にはどんな食事が適しているのかは、人類に近い他の大型類人猿の食生活が参考になります。チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、オランウータンです。みな基本的に果実や若葉を中心とした食生活をしていますが、動物性のタンパク質も必須のようです。
凶暴なチンパンジーが小型のサルを捕獲して食べるのは以前から知っていましたが、最近、平和主義のボノボが小型のシカ(角が枝分かれしていないので厳密にはウシの仲間)を食べている映像を見ました。完全な菜食主義と思っていたゴリラもシロアリを一心不乱に食べていて動物タンパク質を補っていました。ではオランウータンはどうかとGoogleで調べたら、これも雑食性だとのこと。
漫画家の東海林さだおさんも、食べ物名エッセイ「丸かじり」シリーズで、戦中戦後の腹ぺこの子供のころ動物蛋白に餓え、イモムシやカエルを焼いて食べたということです。それがまた素晴らしく旨かったそうで、いわゆるカラダが欲してしたんでしょうね。
以上のことから基本的に好き嫌いOK説は間違ってはいないと思います。
しかし東海林さんがカエルを焼いて食べたということは大事です。食べ物に火を通すということは人類の特権で、この行為により食性は広がりまた安全になりました。危険を冒して生ものを食べるというのは愚の骨頂です。ある食いしん坊の教授が国際学会に参加した際、生牡蛎に手を出し日本に帰ってからA型肝炎を発症しました。好きも度を超すとこんな目に遭います。
今まで何度もくり返してきましたが、やはり甘い物はダメです。一番分かりやすいのは虫歯の原因になること。そして依存性が強く食生活のバランスを崩します。
ここで昔飼っていたネコのことを思い出しました。アイスクリームを作るため牛乳と卵と砂糖を攪拌しはじめると、必ずニャーニャーと言ってまとわりつきました。製氷機に入れた後にボールに残った材料を舐めさせたら、もう、タマリマセン、と味をしめたのです。こんなふうに甘い物はネコにも依存を引き起こします。本来、肉食性ですからカラダに良いはずがありません。
トナカイなどの生肉を食べる伝統的なイヌイットの人々は、動物を丸ごと余すところなく食べています。とくに胃や腸の中の未消化のコケ類を好んで食べるそうです。我々のように肉の一部を食べている場合は、やはり野菜なども摂取しなければならなくなります。
話は好き嫌いにもどりますが、嫌がる子供に無理強いをするのは危険です。給食に出た嫌いなソバを食べさせためアレルギーショックで死亡した事件がありました。それ以後、その小学校では給食に関する好き嫌いには全く関与しなくなりました。私が小学一年生のとき給食にワンタンスープが出ました。私はこれが大好きでしたが、S君はまったく受けつけず泣いて嫌がりました。それに対していつもは優しいK先生は鬼のような形相で迫りました。まだ戦後の餓えの記憶のある時代だったからでしょうが気の毒なことでした。