佐野理事長ブログ カーブ

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第232回 忙酔敬語 食べ物の好き嫌い

最初から結論を申し述べると”食べ物の好き嫌い”はOKです。
NHKの「ダーウィンが来た!」やBSプレミアム「ワイルドライフ」を見ていてつくづく感じるのは動物たちの多くは偏食が著しいということです。象や馬などの草食動物は草しか食わない。イルカは魚だけ、大型のひげ鯨はアミや小魚の群れ、マッコウクジラは深海に住むまだ得体の知れないダイオウイカが主食です。どの動物もイヤな物は食べません。当たり前と言えば当たり前ですが、魚だけで生きている動物を目の前にすると(テレビの画像ですが)、オレたち人間はあれもこれもバランス良く食べろって言われて不自由なもんだなあ、それに本当にアレコレ食べる必要があるのかなあ、と疑問がわいてきます。
「カラダに良い食べ物全部食べて肥え」
医師会雑誌のエッセイの欄に紹介された川柳です。
和食は世界に誇る健康食と言われていますが、これは最近のこと。昔は、とにかく白いご飯を腹一杯食べるというのが庶民のあこがれで、この白いご飯を何杯でも食べられるおかずが良いおかずでした。今でもこの習慣が抜けきれず、スーパーで買った鮭の切り身では物足りないのでさらに塩を振りかけてラップでくるんで一晩寝かせ、カチンカチンの塩鮭にして2,3日かけて食べている人がいます。その結果動脈硬化になり血圧も高く医者のお世話になっていますが、78歳になっても立派に文筆活動を続けています(そろそろダメかも知れませんが‥‥)。友人の医師にはいろいろ言われるそうですが、薬を飲みながらも頑固に自分の生き方をつらぬいています。要するにイヤな物は食べたくないのです。 シカだって好き嫌いはあります。本当は新鮮な草を食べたいのに冬場はしかたなく木の皮を剥がしながら食べるため、その結果、森林が枯れてしまうので北海道では駆除の対象になっています。シカにとっては大好きな若葉の方がカラダに良いにきまっているので,人間の好き嫌いとは根本的に違います。
動物はほうっておいても自分に一番適した物を食べますが、人間の場合はどうなっているのでしょう?
赤ちゃんは母乳かミルクなので選択の余地はありません。問題はそれからです。自然の流れで行けば食べたい物を食べさせれば良いのですが、現在の日本では食べ物があふれかえっていて、親としては迷います。基本的によけいな味つけをしていない素材そのものを生かした食品を与えれば間違いないでしょう。間違っても甘いお菓子やジュースは止めるべきです。砂糖は習慣性があり多くの子供は喜んで飛びつきます。私の子供の頃はジュースはごくたまにコップに半分だけ許されました。妊婦健診などでいっしょに来る幼い子がジュースを1パックかかえているとハラハラします。そのたびにお母さんに注意するのですが、そのジュースは当院の自動販売機で買った物。まさに矛盾そのものです。
また、嫌がる子供にピーマンやネギを強要するのも考え物です。ある研究者は「ピーマンやネギは子供にとって毒性があるので子供は嫌がるのだ」と述べています。そして子供のおやつはお握りが最適であると締めくくっていました。この見解は自分の子供の頃を思い出すと納得です。ピーマンやネギの美味しさに目覚めたのは十歳過ぎでした。
高齢の患者さんに食事の相談を受けるたびに私は言います。
「あと何年生きたいんですか? どうせ生きるんなら好きな物を食べましょうよ!」