院長ブログ カーブ

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第216回 忙酔敬語 女と女性

「女」と「女性」の違いって分かりますか?
ズバリ言うと「女」は加害者で「女性」は被害者です。テレビで、やったやられた事件の報道を見ると、容疑者は「女」、被害者は「女性」と表現されています。とくにNHKはこれで間違いはなさそうですが、民放では容疑者、被害者とも「女性」と言っているところもあるので、絶対とは言えません。
「女」はちょっと生々しい感じがしませんか? ですから悪いことをする可能性も「女性」よりも断然に高いのす。それに対して「女性」は無色透明。これ一本で無難に通せますが、今一つ息吹というか生命感が感じられません。その証拠に歌謡曲では「女心」とか「女が一人」とかすべて「女」。「女性」では間が抜けます。
最近、わが業界(産婦人科)でも「女性」という言葉が頻繁に使われるようになりました。「更年期学会」は「女性」をトータルで診ていこうということで「女性医学会」に変更。日本心身医学会の一部門として「日本女性心身医学会」が発足されています。昔は「産婦人科心身医学会」と言っていたような気がします。
さて、「婦人」について。「婦」はもともと祭壇を掃き清める女性という意味で、王や皇帝の妻でも位の高い存在でした。しかし、年代が下がるに従ってその地位は低下し一般女性についても使われるようになりました。「女中」も差別用語とされ、「お手伝いさん」に代わった経歴がありますが、これも本来、それほど低い身分ではありませんでした。最近は「お手伝いさん」もいなくなりました。話がそれました‥‥‥‥。
産婦人科の婦人科はあまりにも歴史が古いので今さら「女性科」に変更もできず婦人科のままです。「ご婦人」という言い方、故小沢昭一さんの「小沢昭一的こころ」ではさかんに使われていましたが、一般的には「婦人服」などで使用する以外は、言ったり聞いたりする機会が少なくなり、だんだん絶滅危惧種的存在になりました。
「女性」という言葉は一般の会話では使われることはほとんどありません。
「あっ、あそこに女性が歩いている」なんて言いませんよね。「おばあさんが歩いている」、「あの子」とは言いますが、「女性」はめったに使いません。日常会話では心底まで馴染んでいません。「あの子」という言葉。昔はせいぜい十代でしたが、最近は高齢化にともない、だんだん上昇し、二十代では当たり前、なかには四十近くまで「あの子」呼ばれる(呼ばせる?)ことがあります。図々しいというか、しぶといですね。
ニュースで「93歳の女性が‥‥‥‥」なんて聞くと、しっくりきません。93歳だったら普通「お婆さん」でしょうが。でもニュースですからこんななごんだ言い方もできません。何か代案がないかなあ。
年齢の低い場合も問題が生じます。13歳をどう表現するか? この場合、放送局によっても違いが生じます。「女性」だったり「少女」だったり。名前の呼び方もこの年齢ならほとんど「○○さん」ですが、それよりも年齢が下がると「○○ちゃん」とも言われます。小学校低学年以下になればほとんどが「○○ちゃん」。日本語を学ぶ外国人も大変だなあと思います。
最近読んだ東海林さだおさんのエッセイで気に入った言葉を見つけました。「女の人」です。ちょっと長いけれど美しい日本語ですね。