院長ブログ カーブ

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第212回 忙酔敬語 果物の過剰摂取 

練馬総合病院の漢方医学センター長の中田英之先生は東洋医学に造詣が深く、あちこちで講演の依頼を受け、引っぱりだこです。先生曰く、漢方薬を飲む前に患者さんに約束したいことの一つがスウィーツを控えることです。とくに果物に含まれる果糖が問題で依存性があり治療の妨げになるそうです。砂糖(蔗糖)も果糖とブドウ糖から構成されるので、これもダメ。しかし、講演後の慰労会で中田先生はデザートのチョコレートケーキをパクリと平らげました。たまになら良いそうです。
蜂蜜も果糖の塊のような物で危険です。とくに幼いお子さんにはボツリヌスの毒素が微量ながら含まれている可能性があるのでさらに危険です。
自然界の物だから安全かと思いきや、植物は花粉や種子をばらまくために果糖で動物を引き寄せる作戦を立てました。したがって甘い蜜や果物は本来動物のカラダに良いわけではありません。したたかなもので、植物にも知能があるという学者さえいるほどです。
正直言うと、中田先生があまりにも断定的に甘い果物はダメだというので、ちょっと疑っていました。
ところが1月10日の朝日新聞で「動物園の食卓革命 バナナ禁止 サル健康に」という記事を読んで、ようやく納得しました。以下、主な内容を抜粋します。
〔山口県宇部市のときわ動物園。スリランカ原産のトクモンキーは1年前、短い灰色の毛がまだらに見えていた。いまは12頭の多くが茶色の毛をまとう。
毛並みの変化は、エサの変化と連動している。昨年1月末から、バナナとリンゴの果物をやめ、それまでゼロだったキャベツなどの葉物野菜を大幅に加えた。根菜類は3分の1、その他の野菜は2倍に。大豆などタンパク質も加えた。すると間もなく明るい茶色が生えそろった。
エサの効果を確かめるため、10~11月、半分の6頭を以前の果物入りのエサに戻した。すると、2~3週間後から6頭すべてがまだらになった。12月、再び新しいエサにすると、徐々に毛並みがきれいに戻ってきた。〕
昨年、TBS系の『マツコの知らない世界』で、6年間、フルーツのみを食べている中野瑞樹さんという方が出演しました。マツコさんは「私も人のことを言えた義理じゃないけど健康そうには見えない」と心配していました。それに対して中野さんは、カラダに悪いのは重々承知のこと、食べ過ぎのデータがないので体を張った研究しているとのことでした。でも、やせて筋肉量は少なそうで、柑橘系の果物で皮膚は黄色になっていて体毛も少なくなっていました。もう、すでにデータは出ているようなものでしたが、まだ頑張ると言っていました。草食系男子の極み、中野さんに幸あれ!
で、実際の臨床ではどうか? それほど食べていなくても体重は減らないし胃腸の調子が悪いと訴える患者さんがいます。それほど珍しくもなく、しばしばです。どのくらいしばしばかは、はっきり言えませんが月に2,3例ほどでしょうか。食事の内容を訊くと、やはり甘い物が中心でした。
「えっ! 果物もダメなんですか? カラダに良いって言うじゃありませんか」
と、判で押したような返事がきます。日本人は先進諸国の中でも果物の摂取量が少ないと言われていますが、これ以上増やす必要はなさそうです。