院長ブログ カーブ

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第208回 忙酔敬語 燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや

大好きな自然物の番組を見てガッカリしたのはオオワシの生態でした。このシーンはこれまで別の番組でも使い回されていたので、今回もオオワシがどんな行動に出るかは予測がついていましたがやはり残念でした。シベリアから食料を求めてオホーツクに渡ってきたオオワシがとった行動。凍り付いた湖に穴を穿って漁をする人間どもの回りでウロチョロして様子を見ているのです。漁師たちは穴に仕掛けた網からキスやワカサギなどの比較的小さな魚を収穫して、そのうち商品価値にならない物を捨てて去って行きます。この羽を広げると2メートル半もある王者の風格の鳥はこれを狙っていたのです。仲間と争いながら貪り食っていました。その間にカラスがウロチョロ。オイオイ、鳥の王者なんだからそんなセコイことしないで、もっと大物を狙えよな、とテレビの画面に向かってつぶやきたくなりました。もっとも体の大きなオオワシの獲物が人間の捨てた魚だけで足りるはずはありません。他にはハゲタカみたいに大型動物の死骸を餌とするそうです。ま、学習能力があると、ほめるべきなのかもしれません。それにしてもせこすぎる。こりゃ「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」の逆バージョンだな、と思いました。
秦の始皇帝の崩御の後、中国の天下は乱れに乱れました。その中で初めてまとまった行動を起こしたのが陳勝と呉広でした。反乱を起こす前、貧農の陳勝は仲間に「オレが偉くなったらウンヌンカンヌン‥‥‥‥」と言いましたが、相手は笑って「どこにお前みたいなヤツがウンウンカンヌン」。そこで陳勝がつぶやいた言葉が
「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」
燕雀とはスズメやツバメのことで、鴻鵠はカモメなみの中型の鳥。カモメなみで、よくもたいそうなことが言えたものです。オオワシだったら分かるけど。しかし、その後の戦いぶりから察するに、やはりカモメなみでした。劉邦や項羽がオオワシでした。そして、実際のオオワシがこのテイタラクです。
一体、お前は何が言いたいのか?と思われるでしょう。そう言われても困ります。オオワシに対するガッカリ感を是非とも書きたいという衝動にかられただけだからです。あえて言えば人は見かけによらないということでしょうか。また、人によって物の見方が変わることでしょうか。
そう言えば、高校生の性体験率が減少したと、ある識者が嘆いていました。このままでは人口減少に拍車がかかると言うのです。これまでは若者の性が乱れていると騒がれていたのに、こんな意見も出てくるんですね。しかし、私は、良いことだ、と思っています。『How To Safer Sex』にも書いているように、高校生は基本的に「No! Sex」です。自由奔放な言動で有名な、みうらじゅんさんも『正しい保健体育』で「20歳まで法律でセックスは禁じられてます」とまで書いています(法律ウンヌンはウソですけど)。産婦人科医の立場として若年者のセックスは危なっかしくて見ていられません。
新年はじめのブログで、私は人口減少の歯止めとして若年者のお産を奨励するようなことを書きましたが、あれは何なんだと突っ込みたくなるでしょう。居直って言います。「君子豹変す」と。恥ずかしながら私は君子ではありませんから、こんなことを言う資格がないことは重々承知のこと。立ち位置を変えるだけでいろいろな意見が出てくるのは当然のことです。オオワシのとる意外な行動から、いろんなことを考えさせらてしまいました。