院長ブログ カーブ

Close

第207回 忙酔敬語 『How To Safer Sex』

高校生の性教育のために札幌市が作成したパンフレットです。英語が堪能ならともかく普通は一見してすぐに意味は分かりませんよね。文字どおり訳せば「安全なセックスの仕方」。もっと若者向けに「マジやばくないエッチ」なんていうのはどうでしょうか? いずれにしても父兄から「寝てる子を起こすな!」的な文句が来そうですね。
そう言えば、2002年、中学生の性教育の一環として作成された『ラブ&ボディBOOK』が「中学生の性行為を助長している」と国会議員の反対により回収されました。私も回収されたパンフレットを手に入れる機会があったので読んでみましたが、チャラい表現ではありましたが(ま、今時の生徒ですからしょうがないか)何ら問題のない内容でした。手に入れたきっかけは市内のある中学校から性教育の依頼を受け、資料として私が書いた『避妊と性感染症について』を送ったところ、校長先生と教頭先生が飛んで来て、頼むからあの冊子は使わないでくれ、と泣きつかれ、しぶしぶ承諾。ちょうどそのときに例のパンフレット事件があったので、もしあればくださいな、とお願いしたところ、山のように積まれたパンフレットの中から数冊頂戴しました。全国の中学校へは膨大な数が送付されたはずで、無駄な税金が使われたもんだなあ、ともったいなく思いました。
そして、その中学校に行ったところ全校生徒が体育館に集合し、最前列はまだ声変わりもしていないような僕ちゃん的な男の子、後列は質問コーナーで「ジェンダーの時代、先生は女性医師に関してどうお考えですか?」と私をタジタジとさせたオネエ様がいたりして、こりゃあ校長があわてるのもしようがないなあ、と納得。しかし、これだけ多様な生徒に対して一律に講演をするなんて無茶な企画だと呆れました。
私が書いた『避妊と性感染症について』はA4紙17ページにわたる大作?で、当院に来てからの体験から始まり、性感染症、避妊、中絶の実際、男女の性に関する行動について解説したものです。当時、私は性教育に熱心で依頼されれば時間の許すかぎり講演に出向いていました。ただ、今と違って人前で話すのが苦手だったので、そのまま音読してもよいように話し言葉で書きました。実際、ある生徒から、ただパンフレットを読み上げるのはいかかがなものか、という痛いところをついた感想がよせられました。私の書いた大作?は、その後、外来で使用していましたが、最近の若者は文字離れがはなはだしく、それすら読んでくれないので、しかたなく『How To Safer Sex』を配布しています。当初、このパンフレットは、カンジダ症を性感染として扱っていたりして気にくいませんでしたが、最近は改善してきて、ま、しょうがないか、と思って使っています。
16歳の父子家庭の少女に26歳の男が性交渉したあげく、人工妊娠中絶や子宮外妊娠など身体的に多大な負担を強いたとして逮捕されました。その際、新聞で取り上げたのは少女の性に関する無知で、性教育には産婦人科医がかかわるべき的な記載がありました。アホくさい、とカチンと来ました。父子家庭はともかくとして、性といった基本的な人間のいとなみはわざわざ専門家にゆだねる必要はありません。高校の保健体育の教科書にもエイズの感染経路の一つとして肛門というかなり突っ込んだことが書かれていて、「これはどうゆうことか?」と次女に訊かれたことがあります。教科書に記載していることくらい現場の教師が教えろよ、と憤慨しました。そして、産婦人科医に性教育を依頼するのはたんなる責任逃れだと思ったことでした。